PS-104

2010/12/26 作成
2023/03/31 更新

アナログ・ディスク・プレーヤー

PS-104
特長 ダイレクト・ドライブ・ターンテーブル、S字型スタティック・バランス型トーンアーム、MC型カートリッジ、ラワン合板積層型キャビネット
概略仕様 ターンテーブル回転速度:331/3 rpm, 45 rpm. 回転ムラ:0.025%以下.出力電圧:0.3mV.周波数レンジ:15Hz-50kHz. 適合負荷:100Ω.
外形寸法 530mm(W) x 230mm(H) x 430mm(D).重量:19.3kg.
コスト 初期コスト:推定7万円.交換針に約32万円。追加カートリッジに約6万8千円.
履歴 1982年製作.1982年カートリッジをグレースF-14に変更.2012年インシュレーターを磁気フローティング式に変更したが、効果がまったくないため元のインシュレーターに戻す。2012年カートリッジをOrtofon 2M Red に変更.2014年カートリッジをオーディオ・テクニカAT33PTG/IIに変更。 2023年中古店にて10万円で売却.

 


以下の内容は、旧ホームページ「とのちのオーディオルーム」からコピーしたものです。本機を製作・使用した1982年から2014年までの期間における、製作、改良、評価を記述しています。


コンセプト

プライス・パフォーマンスが高く、動作が安定していて、末永く使えるプレーヤーを目指しました。70年代に流行した、低針圧カートリッジや高感度トーンアームの使用は考えませんでした。ターンテーブルには、サーボ制御式であっても、重量級のターンテーブルと強力なモーターを備える機種を選ぶことにしました。


主要パーツ

製作時の主要パーツは以下の通りです。

種類 メーカー
型番 定価 買値
ターンテーブル ソニー TTS-8000 80,000円 19,800円
トーンアーム グレース G-1040 28,000円 16,000円
カートリッジ サテン
グレース
M-14LE
F-14 プロトタイプ
16,400円
-
(記録なし)
(記録なし)
インシュレーター DENON AF-10 5,000円 (記録なし)

ターンテーブルとトーンアームの買値が定価よりもかなり安くなっていますが、買ったのは中古品でも店頭展示品でもないれっきとした新品です。このプレーヤーのためのパーツを集め始めたのは1981年秋ごろでしたが、この頃はDAD(デジタルオーディオ・ディスク; CDやAHDなどの総称)登場が間近だったので、もうアナログ・レコードには未来がない、という雰囲気がありました。秋葉原ではアナログ・プレーヤー関連のパーツは投げ売りされていました。それで、このように安く入手することができたのです。

各パーツの選定理由と概要は以下の通りです。

ターンテーブル

Sony TTS-8000

TTS-8000を選んだのは、何といってもその値段です。ソニーのターンテーブルの中で最上位モデルであるのにも関わらず、定価の1/4の約2万円で売っているのをたまたま秋葉原で見かけ、迷わず買ってしましました。
性能的にも優れていると思います。当時主流だったダイレクト・ドライブ方式で、水晶発振器を使ったサーボ制御(クォーツ・ロックとかクリスタル・ロックと呼ばれていました)で、ワウ・フラッター0.025%を実現していました。サーボモータを使用しているのにも関わらず、重量級のターンテーブルを採用していて、クリスタル・ロック無しでも低ワウ・フラッターを実現していました。
ゴム・マットの中にはゲルが内蔵されており、振動がディスクに伝わるのを防いでいます。
なお、右の写真ではディスク・スタビライザーがのっていますが、これはTTS-8000の付属品ではありません。ORSONIC DS-250という製品で、これを使ってディスクをマットに密着させることで、ゲル入りゴム・マットの効果を向上させます。

トーンアーム

Grace G-1040

グレース(社名は品川無線株式会社)はハイエンドというより、中級モデル中心のメーカーですが、技術的にはしっかりしており、放送局やレコード・メーカーにも製品を供給していました。NHK技研と共同開発した製品もあります。
グレースにはG-545というヒット製品がありました。グレース得意のジャイロ・ジンバル・サポート方式を採用したスタティック・バランス型トーンアームで、経年劣化がほとんどないことで知られていました。価格もリーズナブルで、1万円台半ばでした。G-1040はその後継機です。他社のハイエンド・モデルと較べると地味な存在で、あくまでも基本に忠実に設計されたシンプルなアームです。グレース製品の信頼性の高さを以前から知っていた私は、安売りされているG-1040を見て、迷わず購入しました。なお、私が購入してまもなく、定価が41,000円に引き上げられました。よいタイミングで購入できて、ラッキーでした。
グレース製品には保証期間が定められておらず、保証書もありません。これは保証がないという意味ではなく、グレースが存続する限り、半永久的に保証するという意味です。グレースの品質に対する自信の表れだと思います。

当時、私は3機種のカートリッジを所有していました。サテンM-14LESHURE M-75ED/IIELAC 355E の3機種です。PS-104では、それまでの複数機種のカートリッジを使い分けるやり方を変え、1機種のみを使用し、その実力を引き出すようにシステム各部を調節、改良する方法に改めました。
上記3機種の中で、圧倒的に気に入っていたのが、サテンM-14LEです。高出力MC型で、ユーザー自身が針交換できるという特長を持っていました。音質はクリアーかつダイナミックで、それでいて使いやすく、価格もリーズナブルでした。日本が産んだ世界に誇れる名機とさえ思っていました。それで、迷わずM-14LEを選択しました。
しかし、M-14LEを使用していた期間は僅かでした。G-1040を購入したときにユーザー登録をしたところ、グレースからF-14のプロトタイプを安く頒布するという内容のダイレクト・メール(DM)が届きました。F-14は、大ヒットしたF-8シリーズの上位機種F-9シリーズの輸出バージョンです。私は、高校時代から20代半ばまで、毎年グレース・コンサート(グレース主催のレコード・コンサートで、東京ではお茶の水の日仏会館ホールで開催されていた)に参加していて、グレース製カートリッジの音質の良さをよく知っていました。私はF-14プロトタイプを購入しました。音質面では、M-14LEと甲乙つけたかったのですが、トーンアームG-1040との相性の良さと交換針のバリエーションの多さを考慮し、F-14を選択しました。
これが、グレースと私との長い付き合いの始まりでした。その後もDMが定期的に送られてきて、グレース製品はすべて直販で購入することになりました。今では、創業者であり、CEOである朝倉昭氏と電話や手紙のやり取りをするほど懇意にしていただいています。
M-14LEもスペアー・カートリッジとして、手元に置いておきたかったのですが、友人にぜひ譲ってほしいとせがまれ、売ってしまいました。

Grace F-14 prototype attached on headshell Grace F-14 prototype
グレース F-14 プロトタイプ ルビー・カンチレバー+だ円針付き
「F-14」のロゴが刻まれていない
グレース F-14 プロトタイプ ルビー・カンチレバー+だ円針付き
シリアルNo.が手書き

インシュレーター

DENON AF-10

1980年代始めごろには、かなり高価なインシュレーターが多数出回っていました。その中でAF-10は低価格帯に属する製品でしたが、見て、触ってみて、なかなか性能が良さそうな気がしたので、これを選びました。
複数種類のゴムを組み合わせた、インシュレーター自身が固有振動しないような構造だったと思います。キャビネットにネジ止めでき、高さ調整も簡単にできるので、使いやすいインシュレーターです。
いくらで買ったか記録が残っていないのですが、これもかなり安かったと思います。しかし、性能・耐久性に優れ、1014年6月現在32年間使用しているのに、いまだ弾力性があって、振動をよく吸収します。

キャビネットの構造

Baumkuchen cabinet

オーディオ評論家の故・長岡鉄男氏が考案したバウムクーヘン・キャビネットという方式を採用しました。ラワン合板を複数枚重ねて接着し、一枚の厚い板をつくりキャビネットととします。重ね合わせた合板の木口がバウムクーヘンのように見えるので、長岡氏がバウムクーヘン・キャビネットと名づけました。低コストでハウリングに強いキャビネットをつくれるのが特長です。

一番上の板には、ターンテーブルとトーンアームの取り付け穴を規格どおりの寸法であけ、2番目以降はそれより少し大きめの穴をあけます。

長岡氏のアイデアをデッド・コピーするだけでは癪なので、自分のアイデアをひとつ加えました。中間の板に直径40mmほどの穴をいくつかあけ、その中に振動吸収用に軟質パテを詰め込むことにしました。
一番下の板の下側に、インシュレーターを取り付けます。

本機のキャビネットはアイデア・スケッチをもとに製作したため、図面は描きませんでした。取り付け穴の位置は現物合わせで決めました。


製作

木工

Rough sketch of the cabinet

厚さ21mmと15mmの定尺のラワン合板(いわゆるサブロク合板:1820x910mm)から、21x530x430mmを3枚、15x530x430mmを2枚切り出しました。
それらの板を張り合わせる前に、それぞれに部品取り付け穴をあけました。前述のように、1番上以外は一回り大きめの穴をあけました。ケガキはアイデア・スケッチと現物合わせで行いました。
一番下の板を平らな場所に置き、2番目の板を速乾タイプの木工用ボンドで接着しました。重しを乗せて、ある程度接着剤が固まってきたら、3枚目に板を接着し、以下同様に残りの板を貼り合わせました。
丸一日乾燥させた後、サンダーをかけ、前面、背面、側面を面一に削りました。
砥粉で目止めをしたのち、マホガニー色のスプレー・ニスで塗装しました。塗装は2度塗りでしたが、予想よりはるかにきれいに仕上がって、大喜びしました。シナラワンのような木目が綺麗な板を使わなかったので、見栄えがしないのではないかと心配していましたが、杞憂でした。完成直後の本機を写したカラー写真がないので、見栄えの良さをお見せできないのが残念です。

本機の製作で、私は生まれて初めて電動工具を使用しました。それまでは、のこぎりで板を切り、木口の凹凸をならすのには、かんなや木片に貼ったサンド・ペーパーを使っていました。穴をあけるのにはハンド・ドリルを使っていました。まさに手造りでした。しかし、それでは能率が悪いし、加工精度も低いので、電動工具を使用することにしたのです。電動ドリル(電ドル)は購入しました。上記のサンダーとは、電ドルにサンド・ペーパーのアタッチメントを取り付けたものです。板の切り出しには、借り物の電動丸のこを使用しました。
電動工具の威力にはびっくりしました。今まで、何日もかかっていた作業がほんの1時間ぐらいでできてしまうし、仕上がりもずっときれいです。特にサンディングにより、前面、背面、側面が平らに、滑らかに仕上がったのは嬉しかったです。
ただし、ターンテーブルの取り付け穴だけは、従来の通り、回し挽きのこを使用しました。5枚の板に穴をあけるのはかなり手間がかかりました。

材料の買い出しから上記作業の終了まで、わずか7日間でやってしまいました。電動工具によって能率を上げたとはいえ、我ながら20代の頃の自分は馬力があったな、と思います。今(2014年7月)それだけの気力と体力があれば、ためこんでいるアイデアを次々に具現化できるのに悔しいな、とつくづく感じます(すみません。年寄りの愚痴です)。

組み立ておよび調整

まず、インシュレーターAF-10を取り付けました。AF-10はキャビネットにネジ止めできる構造なので、キャビネットと一体化し、プレーヤーを設置したり、移動したりするときに便利です。
次に、肝心なターンテーブルとトーンアームを取り付けました。取り付け穴の寸法に問題はなく、無事取り付けることができました。

調整としては、以下の5項目が必要となります。

キャビネットの水平調整
インシュレーターAF-10に高さ調整機能があるので、これを利用し、キャビネット(というよりターンテーブル)が水平になるように調整します。水準器を使い、傾きがちょうど±0度になるように調整します。
トーンアームの高さ調整
トーンアームにカートリッジを取り付け、ターンテーブル上に置いたレコードに針をおろします。このときにアームが水平になるように、アームの高さを調整します。アームの水平度は目視で判断します。G-1040には特別な高さ調整の機能がないので、アーム本体とアームベース(キャビネットにねじ止めされている部品で、これにアーム本体を取り付ける)の固定ねじを緩めてアーム本体を上下にずらすことで調整します。この作業は針を盤面に降ろしたままではできないので、調整と水平度の確認を交互に何度か繰り返すことになります。ちょっと面倒な作業です。
オーバーハングの調整
カートリッジがターンテーブルのスピンドルの真上に位置するようにアームを操作したときに、針先とスピンドルの間隔が15mmになるように調整します。これはアーム本体で調整するのではなく、カートリッジのヘッドシェルへの取り付け位置をずらすことによって行います。
針圧調整
G-1040はスタティック・バランス型なので、カウンター・ウェイトを動かすことで針圧調整を行います。まずインサイドフォース・キャンセラーを作動しないようにしておいてから、アームが水平になるように――つまり針圧がゼロになるように――にウェイトを調整します。次に、カウンター・ウェイトについている針圧表示板を0をさすように調整します。最後に針圧表示板が所望の針圧を指すように、カウンター・ウェイトを回します。
インサイドフォース・キャンセラーの調整
テスト・レコードの溝なしの部分に針をおろし、331/3rpmでターンテーブルを回転させ、針が内周側にも外周側にも移動せず、静止するようにインサイドフォース・キャンセラーを調整します。G-1040のインサイドフォース・キャンセラーは、その頃主流のマグネット式ではなく、ウェイト式なので、この調整は少し面倒です。

組み立て終了後、早速本機をラック(2014年7月現在、いまだに使っているスチール製ラック)に設置し、上記の調整を行いました。調整は滞りなくできたのですが、最後にひとつ大きな問題が起きました。そのことについては、次の「自己評価」の項で述べたいと思います。
完成は1982年2月3日のことでした。


自己評価

総合評価

コンセプト通りのプレーヤーができたと思います。しかも、それほど金をかけずに実現できました。
本機の成功には、何か運命的なものを感じます。高性能・高品質のパーツを偶然安く手に入れることができたのが一番の要因ですが、デジタル時代を目前にしていながらも、愛聴盤をいつまでもよい音で聴きたい、という強い思い入れが、運を呼んだのかもしれません。
狙い通り、本機は末永く使うことになり、2014年7月現在、いまだにCDを上回る音を聴かせてくれています。

ターンテーブル

ターンテーブルTTS-8000はほとんど非の打ち所がありません。唯一問題と感じたのは、せっかくゲル入りマットを備えているのに、それがディスクに密着しないため、ディスクの振動を十分に吸収できないことです。そこで、ディスク・スタビライザー ORSONIC DS-250 を購入し、これを使用してディスクをマットに密着させることにしました。DS-250あるなしではかなり音質差があります。DS-250の使用により、音のざわつき感がなくなり、澄んだ音になります。
なお、DS-250は単なる重しではなく、ばねでスピンドルを挟み込み、上下の位置を固定する機構を内蔵しています。つまり、ディスクをターンテーブルに押しつける力を調節できるのです。あまり強くディスクを押しつけても、内周部分だけに力がかかるので、ディスクが反ってしまい、外周部が宙に浮いてしまいます。適度な高さに固定することによって、効果が発揮されます。

TTS-8000にはクリスタル・ロックを解除するスイッチがついています。試しにこれを使ってみたところ、解除状態、つまりサーボなしのほうがはるかに音質が良いことに気がつきました。
サーボ制御は確実に偏差を許容値以内に収めるのには効果的ですが、逆にその範囲内では常に偏差が変動します。TTS-8000のワウ・フラッターはスペック上0.025%となっていますが、その範囲内で常に回転速度が変動します。回転が規定値より速くなれば、モーターは負のトルクを発生して回転速度を落とし、遅くなれば正のトルクを発生して回転速度を上げます。瞬時瞬時でモーターのトルクは大きく変動し、ターンテーブルの回転がぎくしゃくします。また、モーターからは振動が発生し、ターンテーブルに伝わります。
TTS-8000のストロボ・スコープはなかなかの優れモノです。水晶発振回路の出力を分周した120Hzのパルスでネオン管を発光させ、ターンテーブル最外周に刻まれたストロボ・パターンを照らすので、わずかな回転ムラも見て取れるのです。サーボありの場合、ストロボ・パターンがゆらゆらと左右に動くのがわかります。サーボなしに切り替えると、ストロボ・パターンの揺れがピタリと止まり、回転ムラがほとんどゼロになったことがわかります。このことを発見して以来、クリスタル・ロックは解除したままにしています。

サーボなしの場合は、回転速度を手動で調整する必要がありますが、一度調整しておけば、かなり長期間そのままの状態で使用できます。私は年に2~3回しか調整しません。

トーンアーム

2014年7月現在、32年以上も使い続けているので、ターンテーブルTTS-8000同様に、私はG-1040に強い信頼感を抱いています。しかし、製作当時に書いたノートを見ると、10項目の欠点が列挙され、必ずしもこのアームに満足していなかったことがわかります。

最大の問題は、アーム本体をアームベースに固定するねじのうち、一本の頭が折れてしまったことです。このことにより、以後2度とアームの高さを変えたり、アーム本体をアームベースから外すことができなくなりました。
前述のように、アームの水平度の調整は面倒な作業なので、調整終了後、使っているうちにずれないようにしっかり固定しようと思い、プライヤーを使ってきつめに固定ねじの増し締めをしました。このときに頭がとれてしまったのです。このねじは本来手で締めるようにできており、工具を使ったのは私のミスですが、それにしてもそんなに力を込めたわけでもないのに、簡単に折れてしまったので、かなり頭にきました。
幸いM-14LEとF-14の寸法に大きな差がなかったので、F-14の使用に問題はありませんでした。

もうひとつ大きな問題は、アーム・リフターの不良でした。アームを持ち上げたところで止まらず、リフターのレバーから手を離した途端、アームが下降してしまうのです。また、下降時のスピードが速く、頑丈なカートリッジでなければカンチレバーが折れてしまうぐらいストンと落ちます。
この件はグレースに連絡しました。リフターを外してグレースに送れば良品に交換してくれるという回答を得ました。しかし、アームからリフターを外すのが結構面倒くさいので、先送りしているうちに、いつのまにかリフターの在庫がなくなってしまい、修理不能になってしまいました。G-1040の生産台数が少なく、スペア・パーツの在庫も少なかったため、このような結果になってしまいました。
現在に至るまで、針を降ろすときは、リフターのレバーをゆっくり操作することで、針をゆっくり盤面に降ろしています。この操作にはすっかり慣れてしまい、腹も立たなくなりました。

カートリッジ

前述のように、M-14LE を使用していた期間は短く、すぐに F-14 に換えました。ただ、その時期に関しては記録がなく、記憶もあいまいです。
F-14は、音の透明度に関しては M-14LE に一歩譲るものの、癖のない、どのようなジャンルの音楽もそつなく聴かせてくれるカートリッジでした。トーンアーム G-1040 との相性も、予想通りに良好でした。同じメーカーの製品同士なので、当たり前といえば当たり前ですが。
F-14 はその後、針交換などによりアップグレードを重ね、予想をはるかに超えた高性能・高音質カートリッジに変貌していきますが、それついては、次項「改良」をご覧ください。

インシュレーター

期待通りの性能を発揮してくれて、満足しましたが、後に現在居住している家に引っ越してきたときに、床がかなり鳴きやすく、振動が伝わりやすいことに気づき、さらに対策が必要となりました。その内容ついては、次項「改良」をご覧ください。


改良(2003年以前)

グレースからDMが来るたびに、アップグレード用のパーツを購入し、カートリッジとトーンアームを中心にアップグレードを重ねていきました。しかし、その頃使っていたノートを紛失してしまったため、いつどこをアップグレードしたか、それにいくらかかったかが今ではよくわかりません。時系列的に書けないので、パーツごとに改良点を述べます。

フォノ・ケーブル

G-1040付属のケーブルは、かなりの安物だったように記憶しています。OFCなど高音質材料を使用した高品位フォノ・ケーブルの案内が来たときに、早速購入しました。もしかしたら、購入時期は本機の製作の前で、最初からこのケーブルを使っていたかもしれません。というのも、G-1040を購入したのは'81年11月頃で、本機の製作は'82年1月28日~2月3日だからです。製作完了後にフォノ・ケーブルを交換した記憶がないので、最初から高品位フォノ・ケーブルを使用していた可能性が高いと思います。

カートリッジと関連パーツ

交換針

F-14 の針は、年に1度のペースで交換することにしました。だ円針の寿命は約300時間です。毎日LPを1枚ずつ再生すれば、1年で寿命に達しますが、実際には毎日聴くわけではありません。この頃には私も社会人になっていたので、平日にレコードを聴くことは滅多にありませんでした。従って、1年で針が寿命に達することはありませんでした。にもかかわらず毎年交換することにしたのには、2つの理由があります。
ひとつはカンチレバーを支持するダンパーの劣化です。ダンパーはゴム製で、使用しなくても劣化が進みます。寿命は1~2年です。[2015/02/14訂正] {これは私の誤解でした。このページをご覧になった方から指摘をいただき、改めて調査したところ、ダンパーの寿命はもっと長いことが判明しました。ただ寿命は環境(主に温度と湿度)によるので、はっきり何年と定義することは難しいそうです。F-14のダンパーの寿命についてはメーカーに問い合わせ中です} 常に最高の音質を楽しみたいがゆえに、毎年針交換をすることにしました。
もうひとつの理由は、アナログ盤の文化を守りたいという気持ちです。特にグレースのような優良企業には頑張ってほしかったので、半分は寄付のつもりで交換針を買ったのです。これを30年近く続けたのですから、相当の出費になりました。オーディオにお金をかけるのが嫌いな私にしては、珍しいことです。なお、冒頭に交換針にかけた費用を約32万と記載しましたが、これはどんぶり勘定です。
F-14の交換針には、豊富なバリエーションがあります。最初は標準装備であるアルミ・カンチレバー+だ円針を使用していましたが、ほかのタイプも試してみました。

アルミ・カンチレバー+だ円針
MM型カートリッジとしては高品位な音がするが、MC型のM-14LEと比較すると、音の透明度がやや落ちる感じでした。
ルビー・カンチレバー+だ円針
初めてこの針の音を聴いたときは、少なからず衝撃を受けました。クリアかつパワフルな音に圧倒されました。カンチレバーの違いだけで、こんなにも音が変わるのか、とつくづく感心したものです。もちろん、価格は高いのですが、これを聴いたら、もうアルミ・カンチレバー+だ円針には戻れなくなりました。
ボロン・カンチレバー+だ円針
ルビーと並ぶ硬度をもつ、ボロン製のカンチレバーも試してみました。音質は期待外れでした。その後2度と購入していません。
アルミ・カンチレバー+マイクロリッジ針
これにはルビー・カンチレバー以上の衝撃を受けました。今までとはまったくグレードが違うという印象でした。高解像度と雄大なスケール感を兼ね備えており、演奏者の息遣いまで聞こえてきそうな臨場感があります。トレース能力の高さと周波数レンジ(fレンジ)の広さ(20~55,000Hz)によるものと思われます。もうひとつうれしい驚きがありました。中高生の頃にさんざん聴きまくり、すっかり痛んでいた(と思っていた)レコードが、この針を使うとまるでバージン・ディスクのように高音質で聴けるのです。価格は2万円以上しましたが、その後はマイクロリッジ針のみを使うようになりました。

オーディオ界では、MC型のほうがMM型より優れているというの常識ですが、マイクロリッジ針を使用するようになってからは、その常識を疑うようになりました。音質を決定づけるのは、発電機構ではなく、スタイラス形状だと考えるようになりました。
マイクロリッジ針の形状は、カッティング・マシンのカッターとほぼ同一であり、音溝を完全にトレースします。他の形状ではトレース時に必ず歪みを発生します。マイクロリッジ⇒その他のライン・コンタクト針⇒だ円針⇒円錐針の順で歪が大きくなります。また、寿命は同じ順で短くなります。マイクロリッジ針の寿命は2,000時間もあります。音溝に与えるダメージの大きさも同じ順で大きくなります。

マイクロリッジ針の歪みの少なさ(円錐針の歪みの多さ)の理由を図示すると、以下のようになります。

Pitch effect

図の左側はカッティング・マシンのカッターが刻んだ音溝を表わし、右側は円錐針がその音溝をトレースする様子を示します。*1の箇所(傾斜部分)で、針は溝から押し上げられ、縦振動を起こしています。これはピッチ効果と呼ばれる現象で、左右チャンネルで逆相信号を発生させます。幅の狭い溝や高い周波数部分で発生しやすい歪です。
また、カッターの各接点A-B、A'-B'は等距離ですが、円錐針の接点A-B間は伸び、A'-B'間は縮んでいます。このことで、たとえ左右チャンネルに同じ音が刻まれていても(つまりモノラルでも)、左右の音が違って再生されます。つまり、歪みを発生するということです。
これらの歪は、カンチレバーや発電機構がいかに高性能でも、打ち消されることはなく、出力されます。
マイクロリッジ針の形状はカッターのそれとほとんど同じなので、図の左側と同じようにトレースし、上記のような歪は発生しません。

しかし、興味深いことに、今でも円錐針を使用しているカートリッジは存在して、中にはデノンDL-103のように高い評価を受けているものもあります。たとえ音が歪んでいても、人によってはそれが良い音に聞こえるわけです。私のオーディオ仲間にもDL-103を愛用している人がいますが、ほかのカートリッジに換える気はなさそうです。DL-103の特徴は、いかにもアナログらしい音を出すということです。それも1960年代風の昔懐かしいレコードの音という感じです。円錐針が発生する歪が、ある種の「響き」のようなものを原音にプラスしているように聞こえます。

私の場合は、アナログ盤にアナログらしい音を求めているのではなく、あくまでHi-Fiソースとして使用しています。アナログ盤といえども、低歪み、低雑音を望みます。もし、ほかにもっと優れたソースがあれば、躊躇なくそちらに乗り換えます。ただし、今までに入手したアナログ盤のほとんどが愛聴盤といっていいほど特別の愛着があり、たとえほかのソースをメインに使用することになっても、アナログ盤や本機を手放すことはないと思います。

マイクロリッジ針が古いレコードでも高音質に再生できるのは、下図のように音溝の磨滅していない部分をトレースするためです。

Line contact

図の左側は、円錐針またはだ円針が音溝の一部を磨滅させる様子を示しています。右側は、マイクロリッジ針が、古いレコードの音溝のまだ磨滅してない部分をトレースする様子を示しています。

ヘッドシェルとリード線

ヘッドシェルはグレース純正のカーボン・ファイバー・ヘッドシェルに変更しました。同時にリード線をグレース純正のLC-OFC/Silverに変更しました。
カーボン・ファイバー・ヘッドシェルはその名の通り、カーボンファイバー製で、金属製のような鳴きがありません。G-1040に付属のアルミ製ヘッドシェルに比べ、どの程度音質が改善されたか、よく覚えていませんが、若干の効果はあったと思います。今(2014年7月)でもこのシェルを使い続けています。
LC-OFC/SilverはLC-OFCに銀メッキしたリッツ線です。シェルと同時に採用したため、このリード線の効果かどうかはっきりしませんが、音の雑味が消え、瞬発力が増したような気がしました。

カートリッジ本体

Grace F-14

グレースのDMに、ヨーロッパの代理店が在庫していたF-14本体を逆輸入し販売する旨書かれていました。それまで使用していたプロトタイプも製品と変わらないとは言われていたのですが、やはり製品のほうが完成度が高いのではないかと考え、購入することにしました。
プロトタイプも、もしかしたら将来希少価値が生まれるかもしれないので、捨てずに、スペア・カートリッジとしてとっておくことにしました。

右の写真は製品のF-14です。「F-14」のロゴが刻まれています。マイクロリッジ針、カーボン・ファイバー・ヘッドシェル、LC-OFC/Silverリード線との組み合わせです。


改良(2003年以後)

針交換の終了(2009年11月)

これは改良ではありませんが、毎年行ってきたF-14の針交換を止めることにしました。マイクロリッジ針(US-14MR)の価格が急騰し、4万円以上になってしまったからです。それまでは2万円台だったので、毎年交換するのもそれほど負担に感じていませんでしたが、4万円以上となると、グレードの高いカートリッジが1台買えてしまう価格です。現状の針を限界まで使い、その後は別のカートリッジに買い替えることにしました。
US-14MRはその後も値上げを繰り返し、2014年現在10万円近い価格になっています。F-14+マイクロリッジ針の音は非常に魅力的なので、その価格でも買う人がいるのだな、と妙に感心してしまいます。

インシュレーターの改良(2011年4月)

2003年5月に現在の住居に引っ越した際、オーディオ・ラックは新調せず、従来使用していたスチール・ラックをそのまま使用しました。オーディオ用のラックではないので、振動が伝わりやすいという欠点があります。このことに加え、Gaudiを設置した部屋が2階にあり、床があまりしっかりしていませんでした。スピーカーからの振動が以前に比べ、より伝わりやすくなっていました。しかし、うかつなことに、2011年までハウリング・マージンのチェックをしないでいました。
2011年4月に、チェックをしてみたところ、プリアンプのボリュームを最大にすると、ハウリングが発生することが判明しました。このときには、スピーカーの設置の仕方にも問題があったのですが、とにかく本機のインシュレーターを強化することにしました。

オーディオ・メーカー製のインシュレーターは価格が高すぎるので、もっと金をかけない方法として、ハネナイト・ゴムを使用することにしました。ホームセンターでちょうど良いサイズの4個組のハネナイト製インシュレーター(東京防音 THI-555)を見つけたので、それをAF-10の下に置きました。効果は歴然で、ハウリングは起こさなくなりました。
このハネナイト製インシュレーターは、ラックの足の下にも設置し、さらに振動が伝わりにくいようにしました。

Tokyo Bouon THI-555 THI-555 installed
東京防音 THI-555 設置状態

RCAプラグの交換(2011年11月)

Grace genuine tonearm cable

フォノ・ケーブルの左チャンネルが断線してしまったので、フォノ・ケーブルを交換することにしました。
念のため、市販のフォノ・ケーブルをG-1040に使用できるかどうかをグレースに問い合わせたところ、互換性がないので、グレース製ケーブルしか使えないとの回答がありました。たまたま、DMにかつてのグレース製フォノ・ケーブルとまったく同じ材料と構造のケーブルを再生産したとの情報がありました。\21,000の標準タイプと\35,000のハイ・グレード・タイプの2種類がありましたが、あまりお金をかけたくなかったので、標準タイプを購入しました。
このフォノ・ケーブルは実物を見てがっくりきました。どう見ても安物としか思えません。RCAプラグは金メッキもしていないし、ケーブルの静電容量も大きそうです。このケーブルは使うのをやめて、従来のケーブルを修理することにしました。

Corroded solder

断線したケーブルを調べてみると、RCAプラグのはんだ付け部がぼろぼろに腐っていました。これは過去にも何度か経験したことですが、一流メーカーの製品でも、はんだごてによるはんだ付けは、製造後10年ぐらいで劣化がはじまり、20年ぐらい経つとぼろぼろに腐ってしまいます。またも同じ経験をしたわけです。
右の写真は実物を写したものです。写真では少しわかりにくいのですが、はんだが崩れてしまっています。
生産ラインではすべての作業の工数が厳密に定められていて、はんだ付けは1箇所約1秒というのが標準です。つまり、チョン付けをやっているわけです。チョン付けでは、焼き切れなかったフラックスがはんだ内に残り、はんだにスが入ってしまいます。年月がたつにつれて、はんだが内側から腐ってきます。
技術面でアマがプロに勝てることは滅多にありませんが、はんだ付けだけは別です。プロのはんだ付けでは、音質も悪く、長持ちしません。私も元は電子技術者のはしくれだったので、プロのはんだ付けもマスターしていますが、すべてのNOBODYブランド作品には、とのち流はんだ付けを採用しています。(とのち流はんだ付けについては、こちらをご覧ください)

従来のフォノ・ケーブルのRCAプラグを付け替えました。使用したのはオヤイデ電気で購入したノーブランドのプラグです。価格は200円台と安価ですが、なかなか造りがしっかりしていて、絶縁材にPTFE(フッ素樹脂)を使用しているのが魅力的です。PTFEは熱に強いので、とのち流はんだ付けに適しています。
余計な金属部品は、音質を劣化させるだけなので、捨ててしまい、プラグ本体だけ使用しました。はんだ付けをした後は、熱収縮チューブをかぶせて仕上げました。
二十数年前のケーブルだけあって、かなり銅線が腐食していたのですが、意外にあっさりはんだが浸透し、無事はんだ付けができました。
音質は明らかに改善されました。今回の作業は、単なる修理ではなく、改良といってもよいかもしれません。ただし、このケーブルが新品のときと較べて良くなったかどうかは定かではありません。

New RCA plug Parts of new RCA plug New RCA plug attached to the tonearm cable
使用したRCAプラグ

3個の部品から構成されている
右側のプラグ本体のみを用いる
RCAプラグ取り付け終了

磁気フローティング式インシュレーターの試験的導入(2012年1月)

山本音響工芸 MGB-1の購入

ハネナイト・ゴムにより、ハウリングを防ぐことに成功しましたが、まだハウリング・マージンが十分ではないと感じていました。さらに高性能のインシュレーターを採用し、より大きなマージンを得ることを検討しました。
プレーヤーを棚板の上に置くのではなく、上からナイロン糸でつるす方法なども検討しましたが、実現が難しそうなので、メーカー製で何か良いインシュレーターがないか検索しました。目に留まったのが、山本音響工芸のMGB-1という製品です。磁石同士のの反発力を使って、インシュレーターの上側部分を宙に浮かすという方式のインシュレーターです。
インシュレーターの上側と下側が接触しないので、振動の伝わりようがない、画期的な製品だと思いました。価格は4個組で34,300円(楽天市場にて)と高かったのですが、誘惑に負けて買ってしまいました。常日頃、「オーディオ・アクセサリーは高価なものほど効果がない」と主張している私としては、珍しい買い物でした。

MGB-1の問題点

Instruction of Yamamoto Onkyo Kougei MGB-1

現物を受け取って、まず少し気になったのが、詳しい取扱説明書がないことでした。説明書きは包装に印刷されている、ごく簡単なものだけでした。しかしもっと驚いたのは、この製品の漏れ磁界の強さです。試しに5寸釘を近づけてみると、がっちり吸い寄せられて、相当力を入れないと引き離せないほどでした。
カートリッジは外部磁界に弱い部品です。もし誤ってカートリッジをMGB-1近づけたら、あっという間に壊れてしまいます。このことについては、グレースにも相談しましたが、とにかく絶対に近づけないように、というアドバイスを受けました。また、初めて使用するときは、壊しても惜しくないような安物のカートリッジで影響を確認するようにとも言われました。しかし、このような注意点は、説明書きには何も書かれていませんでした。

Instruction of Yamamoto Onkyo Kougei MGB-1

この漏れ磁界の問題に関しては、山本音響工芸にもEメールで質問をしました。この質問に対する回答は、具体性に乏しく、私の不安を払しょくするようなものではありませんでした。一言でいえば、「多分大丈夫なので、使ってみてください」という内容でした。もっと具体的なデータを示して説明してほしかったので、さらに2度質問を繰り返しました。結局返ってきたのは似たような具体性のない回答でした。それらの回答から読み取れたのは、1) 精密な測定器を持っていない、2) 測定のノウハウがない、3) カートリッジがどの程度の磁力で影響を受けるか把握していない、4) 実機を使った実証実験をやったことがない、ということでした。
MGB-1 宣伝文句また、回答の中に 「アナログ・プレーヤーに使うのが不安であれば、アンプ用に使ったらどうか」というアドバイスが含まれていました。これにはさすがに呆れました。MGB-1の宣伝文句には、「アナログ・プレーヤーに最適」という意味の文言が含まれています。その宣伝文句を自ら否定しているようなものです。漏れ磁界に悪影響を受けるのはカートリッジだけではありません。あるゆるオーディオ機器は、外部からの磁界によって悪影響を受けます。アンプのほうが内部の部品や配線とインシュレーターとの距離が短いので、むしろアナログ・プレーヤー以上にMGB-1を使ってはならないのです。山本音響工芸にはそのような基礎知識をもった技術者が一人もいないのでしょうか。

防磁対策

せっかく大枚はたいて買ったインシュレーターなので、どうしても使ってみたくて、磁気シールドを施した上で使ってみることにしました。ハウリング・フリーのアナログ盤の音がどんな音が聴いてみたかったのです(もちろん、ヘッドフォンを使えばハウリング・フリーの音を聴けますが、私はヘッドフォンが好きではないので、あくまでスピーカーから出る音にこだわっています)。
考えついたのは、塗料用の缶の上部を切り取り、内側に防磁シートを貼り、それをMGB-1にかぶせて使う方法です。防磁シートには東京防音のスーパー・マグネシールドTMP-5000-IIを使用しました。材質は特殊ニッケルとしか説明がありませんでしたが、パーマロイに近いものと思われます。直流磁界にも交流磁界にも効果があります(残念ながら、この製品は2012年6月に生産終了となったそうです)。また、塗料缶の外観がいま一つだったので、外側にステンレス・シートを巻くことにしました。

Yamamoto Onkyo Kougei MGB-1 Shield cover for MGB-1 MGB-1 w/ the shield cover MGB-1 installed
山本音響工芸
MGB-1(4個セット)
手造りの磁気遮蔽カバー

磁気遮蔽カバーを取り付けたMGB-1 キャビネットに取り付けたMGB-1

磁気遮蔽の効果は、方位磁石を使って確認しましたが、思ったよりも効果はありませんでした。底面に防磁シートがないことで、そこから磁気が漏れているようでした。対策として、キャビネット底面全体に防磁シートを貼り、MGB-1からの漏れ磁界を少しでも防ぐことしました。
カートリッジをアームに取り付けた状態では、カートリッジはキャビネット底面より14cmほど離れているので、MGB-1の漏れ磁界の影響はないと判断し、とにかくテストを行うことにしました。

評価

ターンテーブル上にレコードを置き、針を降ろし、プリアンプのボリュームを上げていくと、ツマミが3時ぐらいのところで、あっさりハウリングを起こしました。
もうひとつ別のテストをしました。針を降ろしたままの状態で、ボリュームを小さめにして、ドライバーの柄で軽くプレーヤーのキャビネットを叩きました。スピーカーからはコンコンという音が出てきました。次に、同じ要領で、プレーヤーを置いてある棚板を叩いてみました。ちょうど同じようなコンコンという音が聞こえました。つまり、MGB-1は「振動を遮断する」どころか何も減衰させずにそのまま振動を通過させていたのです。

見事にだまされました。「オーディオ・アクセサリーは高価なものほど効果がない」ということを、またしても思い知らされました。考えてみれば、宣伝文句が大げさな割には、パッケージの説明書にも山本音響工芸のウェブ・サイトにも、MGB-1のテクニカル・データは一切示されていません。このような製品はまがいものであり、決して買ってはいけない、と改めて自分に言い聞かせました。

振動を減衰できない理由は、上側マグネットがただ空中に浮いているのではなく、下側マグネットとの間に生じる強い反発力を受けているということです。PS-104の重量は約20kgです。これだけの重量が加わると、上下のマグネットの間隔はほんの2mm前後に狭まります。間隔が狭まるほど反発力はさらに増します。この強力な反発力によって下側マグネットの振動は上側マグネットに伝わるのです。振動が減衰するのはかなり高い周波数に限られます。しかし、アナログ・ディスク・プレーヤーのハウリングは比較的低い周波数で起こるので、MGB-1にはハウリング防止の効果はないのです。

言うまでもないことですが、インシュレーターは元のAF-10に戻しました。

カートリッジの交換:Ortofon 2M Red (2012年6月)

2009年以来針交換なしで使用してきたF-14がついに老朽化し、高音が出なくなってしまいました。いずれはF-14以上のグレードのカートリッジに買い替えるつもりでしたが、まだ予算がとれていなかったため、ピンチ・ヒッター的に、MM型の安くてかつ音の良いカートリッジを買うことにしました。選んだのはOrtofonの2M Redです。

このカートリッジの音の良さは、あるFM番組の中で経験しました。
この頃、ジャズ・ジャーナリストの小川隆夫氏がDJを務めるJazz Conversationという番組が、Inter-FMで日曜の午後に放送されていました。私は毎週楽しみに聴いていました。番組中に「必聴!ジャズ名盤」というコーナーがあり、毎週高音質レコードやSACDの名盤を紹介していました。
ある高音質レコードが紹介されたときに、その音質の良さが、FMというメディアを通しても、ひしひしと伝わってきました。きっと私の手に届かないような高価なカートリッジが使われているに違いないと思い、番組のホームページをチェックしてみました。カートリッジのメーカー・型番は、Ortofon 2M Redと記載されていました。聞いたことのないカートリッジだなと思い、Ortofonのウェブ・サイトを調べたら、何とOrtofon製カートリッジの中で、最も安価な製品だということがわかりました。ぜひ使ってみたいと思いました。

Ortofon 2M Red

買値は9,500円でした。ヘッドシェルには、グレースHS-5を、リード線にはグレースOFCを使用しました。期待通りの高音質で、このままGaudiの標準カートリッジとして使い続けようかと思ったほどです。
しかし、多くのレコードを聴きこむにつれて、いくつか不満が出てきました。
50年代のジャズなどを聴くと、かなり生々しい音に聞こえるのですが、最近の録音の場合、どこか物足りない感じがします。これは2M Redのfレンジが狭い(20~20,000Hz)せいだと思います。アナログ盤らしいきめ細かく、滑らかな音にならないのです。
トレース能力にも問題がありました。いつも音質チェック用に使っているノラ・ジョーンズのレコード(LP, Norah Jones, Feels Like Home, Classic Records 7243 5 84800 16)をかけると、針飛びを起こすのです。このレコードの音溝は普通のLPよりも幅が狭く、2M Redの太い針では溝にはまらないのです。
さらにがっかりしたことは、古いレコードが、いかにも古いレコードのようにしか聞こえないということです。これは、2M Redの針が通常のだ円針だからであり、マイクロリッジ針のようなライン・コンタクト針との決定的な差です。レコードに与えるダメージも大きいので、古いレコードはかけないようにしました。

カートリッジの交換:オーディオ・テクニカ AT33PTG/II (2014年4月)

機種選定

2M Redを使い始めて以来、あまりレコードを聴かなくなってしまい、早くハイ・グレードのカートリッジに買い替えたいと考え続けていましたが、消費税増税がきっかけになり、新しいカートリッジを購入することにしました。増税直前の3月下旬に購入し、4月から使い始めました。選んだのはオーディオ・テクニカのAT33PTG/IIです。選定理由は以下の通りです。

設計が新しいこと
F-14のように古くてもよい音のするカートリッジはありますが、最近の高音質レコードの音質をフルに引き出すために、最新の機種を選ぶことにしました。
Hi-Fiであること
当たり前の条件のようですが、カートリッジはスピーカーに次いで、再生音に個性がつきやすいコンポーネントです。私はシステムの入り口であるカートリッジで音に色づけされることを好みません。音溝に記録されている音楽情報を忠実に電気信号に変換するカートリッジを望みます。
ライン・コンタクト針を使用していること
今までの経験上、これは絶対条件です。音質の良さに加え、針の寿命の長さ、レコードに与えるダメージの少なさ等々の特長があります。できれば、マイクロリッジ針にしたいところです。
MC型であること
私自身はMM型がMC型に劣っているとは考えていませんが、業界では高級機はMC、普及型はMMという棲み分けができてしまっています。ハイ・グレード品となると、MC型のほうが選択肢が多いのです。また、低出力MCは使ったことがないので、一度経験してみたいという思いから、MC型の中から選ぶことにしました。
予算は5万円以下
消費税増税前に、カートリッジ以外にもオーディオ製品やパーツを色々と買いこんだので、カートリッジに回せる予算が少なくなりました。それに、金をかけずにハイ・エンドの音を実現するのがとのち流オーディオの楽しみ方なので、5万円以上のカートリッジはGaudiにそぐわないと思いました。

インターネットで情報収集したところ、最初に欲しくなったのが、ZYX R50 Bloom IIです。完全に予算オーバーなのですが、マイクロリッジ針を使用していることと、ZYX社が物理的Hi-Fiのみならず心理的Hi-Fiも追求しているメーカーであることに強く惹かれました。しかし、やはり予算オーバーを理由に断念しました。
Ortofon MC-30Wも検討しましたが、生産終了した旧モデルなのに価格が大して下がらなかったことと、設計が古いことから、候補から外しました。

色々調べているうちに、楽天市場でテクニカのAT33PTG/IIが約3万8千円で売られているの発見しました。仕様を調べてみると、ライン・コンタクト針の一種であるマイクロリニア針が使われていること、その他各部に、ボロン・カンチレバー、ネオジウム・マグネット、PCOCC線などの贅沢な素材が使用されていることがわかりました。広いfレンジ(15~50,000Hz)や針の長寿命(1,000時間)も私の要求に合います。日本製であることも、好ましく思いました。かくして、新カートリッジはAT33PTG/IIに決定しました。

いつものことながら、今回の機種選定に関しても、オーディオ評論家の評価は一切当てにしませんでした。また、一度も試聴することなく、機種を選定しました。
オーディオ評論家の評価をあてにしない一方で、楽天市場や価格.comなどのユーザー・レビューは参考にしています。ユーザーは、メーカーの太鼓持ちであるオーディオ評論家とは違い、何か問題があればズバリ指摘するので、参考になるのです。AT33PTG/IIのレビューは多くはありませんでしたが、中にはこの製品を酷評するものがありました。「針が簡単に外れるので、使い物にならない」という内容でした。この点は頭の隅に記憶しておくことにしました。

取り付けと調整

audio-technica AT33PTG/II

実物を見ての第一印象は、「超精密機械」でした。実に精巧にできていて、F-14より明らかに加工精度や組み立て精度が高いと感じました。私の老眼では針がどこにあるのか見つけるのに、少し時間がかかったぐらい、テーパー加工されたボロン・カンチレバーは細く、針自体も小さいものでした。前述の「針が簡単に外れる」というのは、硬度は高いがもろい材質であるボロンで作られたこの細いカンチレバーが、乱暴に針を降ろすと折れてしまう、ということだと解釈しました。今までも針を降ろすときには注意していましたが、今後はさらに注意して、ゆっくり針を降ろすことにしました。

ヘッドシェルにはグレースのカーボン・ファイバー・ヘッドシェル、リード線には付属のPCOCC線を使用しました。
ヘッドアンプには、失敗作として押し入れの中にしまいこんであったHA-213を使用しました。実は、AT33PTG/II用の購入とほぼ同時期に、Ortofonのフォノ・イコライザーEQA-333を中古で購入してあったのですが、訳あってHA-213を使用することにしました。詳しいきさつは、「2014年のGaudi」と「HA-213」のページをご覧ください(どちらのページも旧ホームページ内にあります)。

A bit unlevel tonearm

調整に関しては、ひとつ問題がありました。AT33PTG/IIの高さはF-14より低く、アームの高さをその分低くしなければならないのですが、前述のように、G-1040は高さ調整ができない状態になっています。カートリッジとシェルの間に鉛板を挟むことも考えましたが、余計な質量は加えたくありません。
実際にAT33PTG/IIをアームに取り付け、ディスクに針を降ろしたところ、やはり、カートリッジ側がやや下がってしまいましたが、それほどアームの傾斜は大きくなく、カートリッジのボディと盤面の間隔も十分とれていたので、そのまま使用することにしました。

針圧をメーカー推奨値である2.0gに調整し、インサイドフォース・キャンセラーを調整した後、早速音出しを行いました。最初は音がほとんど出ませんでした。LPを5~6枚かけているうちに、しっかりと音が出るようになりました。LP10枚かけて、ほぼエージングが完了しました。今まで色々なカートリッジを使ってきましたが、エージングで大きく音が変わるものはこれが初めてです。

評価

期待通りの高音質でした。雄大なスケール感ではF-14MRに若干及ばないものの、解像度ではAT33PTG/IIが勝ります。 どんな楽器の音も正確に再現します。ボーカルも生々しく聞こえます。これは、超高音域までよく伸びた周波数特性(f特)によるところが大きいと思います。最近のカートリッジやスピーカーにありがちな、低音を強調した感じがなく、f特がフラットに感じられるのも高評価の理由の一つです。
これも期待していたことですが、古いレコードがバージン・レコードのように良い音に聞こえます。マイクロリニア針はマイクロリッジ針に匹敵する性能を有しているようです。

私が14歳のころから愛聴しているレコードに、デイブ・ブルーベックの「タイム・アウト」(LP, The Dave Brubeck Quartet, Time Out, CBS SONY SONP 50129)があります。中学時代は、LPはほんの5~6枚しかもっていなかったので、同じレコードを擦り切れるまで繰り返し聴くという聴き方をしていました。特にタイム・アウトはほとんど毎日聴いていたと言っても過言ではありません。その後今に至るまで、時々どうしても聴きたくなって、かけているレコードです。通算で何百回かけたかわからない「擦り切れた」レコードです。AT33PTG/IIは、F-14MRがそうであったように、この43年前(2014年現在)のレコードをとても良い音で聴かせてくれます。
実は、私はタイム・アウトのリイシュー盤を2枚持っています(SACD, SME Records SRGS 4535; LP, Jazz Wax Records JWR 4525)。しかし、そのどちらも古いレコードほど音が良くないのです。妙にベースの音が強調され、出しゃばって聞こえ、反面シンバルの音に力がなく、前面に出てきません。特にB面1曲目の「Three to Get Ready」を聴くとそのことを強く感じます。今後もタイム・アウトを聴きたくなったら、古いレコードをかけると思います。

私としては、AT33PTG/IIには100%満足です。しかし、姉妹機であるAT33EVよりも人気がないのもわかるような気がします。アナログ盤にいかにもアナログらしい音を求める人や、カートリッジの個性を重視し、その時々の気分や音楽のジャンルに合わせて複数のカートリッジを使い分ける人には、物足りないと感じると思います。AT33PTG/IIは確かに高音質ですが、聴きようによっては無個性で味気ない音に聞こえます。ちょうどハイレゾ音楽ファイルを聴いているような感じです。
しかし、それこそ私が求めていたカートリッジなので、今後末永く使っていくつもりです。

長年グレースに肩入れしてきた私ですが、テクニカにも頑張って日本の優れたオーディオ技術を守り、またさらに発展させてほしいと願っています。

[2015/01/31 追記] {
AT33PTG/IIを用いて様々なジャンルの音楽、多くの楽器の音を聴きましたが、どんな音でも正確に再現できるカートリッジだということが確認できました。
私が所有する中で最もトレースが難しいレコードは、フルート奏者ハービー・マンのダイレクト・カッティング盤(Herbie Mann, Forest Rain, Herbie Mann Music HMM-1)です。このアルバムではハービー・マンのフルート演奏をフィーチャーしていますが、フルートの音はアナログ盤が不得手とする音です。このレコードはF-14MRでもトレースできずに針飛びを起こしてしまうほど、カッティング・レベルが高く、かつピーク・レベルが高いのが特徴です(グルーブ・ピッチは約0.12mmで、片面の収録時間は15分です)。もちろん2M Redではトレースできません。
このレコードをAT33PTG/IIは問題なくトレースします。つまりトレース能力に関しては、F-14MRを上回っているのです。今までMM型の方がトレース能力に優れていると考えてきた私には、この事実には少し驚かされました。これは30年間の技術の進歩のたまものだと思います。
またこの事実は、AT33PTG/IIとトーンアームG-1040の相性が良いということの証明でもあります。G-1040は軽針圧タイプのカートリッジは苦手としています。F-14MRを使用していたときには、推奨針圧の1.8gよりも重い、2.0gで使用していました。[2015/02/14 訂正] {推奨針圧の1.5gよりも重い、1.8gで使用していました}AT33PTG/IIの推奨針圧は2.0gであり、このぐらいがG-1040が最も性能を発揮する針圧だと思います。

もうひとつ試したことがあります。このカートリッジとデジタル・レコーダーKROG MR-2000Sを使用して、高音質レコードを何枚かDSD5.6M(DIFF)フォーマットで録音し、録音前の音と聴き較べてみました。結果は、録音後の音のほうが良いということでした。これは、録音時にはスピーカーから音を出していないため、アコースティック・フィードバックの影響がなくなったためと考えられます。さらに驚いたことに、ダウンロードしたハイレゾ音楽ファイルと聴き較べても、アナログ盤からの録音の方が音質が良いのです。AT33PTG/IIが低歪みで、ほとんど色付けのないカートリッジだからこその結果だと思います。このことについては、別のページでもっと詳しく説明したいと思います。

以上の経験から、AT33PTG/IIが私が今まで聴いたことのあるカートリッジの中で最高のものであると思うようになりました。過去30年以上F-14MRが最高だと思っていた私にとって、久しぶりの優秀なカートリッジとの出会いです。
}

その他のコメント

ひとつ、うれしい誤算がありました。ヘッドアンプのHA-213です。このアンプは入念に設計されたアンプではなく、本来ヘッドフォン・アンプとして造りはじめたアンプを、急きょヘッドアンプに作り変えたアンプです。自分としては、完全な失敗作だと思っていました(詳しくはHA-213のページを参照)。しかし、いざ使ってみたら、予想を上回る高音質でした。

余談ですが、ネット上のレビューの中で、AT33PTG/IIのエージングに1年以上かかり、今後もまだ音質が変化しそうだというコメントがありました。私は、この音質の変化は経年変化によるものではなく、温度変化によるものと推察します。カートリッジの適正針圧は温度に依存します。MM型カートリッジは針圧が適正値から多少ずれていても、音質にほとんど影響しませんが、MC型はかなりの影響を受けます。ですから、季節ごとに針圧を変える必要があります(365日24時間温度を一定に保つように空調のいきとどいた部屋で使う場合は別ですが)。このレビューを書いた方は、おそらくずっと同じ針圧で使い続けているのだと推察します。


まとめ

2014年7月現在の本機の構成は、下表のようになりました。私としては、十分満足のいくプレーヤーに仕上がったと思います。今後は、故障がない限り、この構成で末永く使い続けるつもりです。
[2022/05/25 追記] {本機は2017年6月に引退させました。現在はテクニクス SL-1200GRを使用しています。カートリッジは引き続き AT33PTG/II を使用しています}

種類 メーカー 型番 定価(税抜き) 買値 備考
ターンテーブル ソニー TTS-8000 80,000円 19,800円 サーボなしで使用
トーンアーム グレース G-1040 28,000円 16,000円  
フォノ・ケーブル グレース OFC低容量ケーブル (不明) (不明) RCAプラグ交換済み
カートリッジ オーディオテクニカ AT33PTG/II 58,000円 38,300円  
ヘッドシェル グレース カーボンファイバー (不明) (1万円以上)  
シェル・リード線 オーディオテクニカ PCOCC線 AT33PTG/II付属品
キャビネット 自作 ラワン合板積層型  
インシュレーター DENON
東京防音
AF-10
THI-555
5,000円
1,940円
(不明)
約1,600円
 
ディスク・スタビライザー ORSONIC DS-250 (不明) (不明)  
レコード・クリーナー マクセル AE-320 (不明) (不明) 電動自走式
スタイラス・クリーナー (不明) (不明) (不明) (不明) カーボンファイバー製

[2023/03/31 追記] {本機は、2023年3月、中古店にて10万円で売却しました。下表は売却時の構成です}

  メーカー 型番 備考
ターンテーブル ソニー TTS-8000  
トーンアーム グレース G-1040  
カートリッジ グレース F-14 プロトタイプ シリアル番号:94701
交換針 グレース US-14R ルビー・カンチレバー、F-14用
ヘッドシェル グレース HP7-ST プロ用、F-14に使用
カートリッジ オルトフォン 2M Red  
ヘッドシェル グレース   G-1040 付属品、2M Red に使用
フォノケーブル グレース   低容量タイプ
フォノケーブル グレース PC-4R G-1040 付属品の復刻版、未使用
キャビネット NOBODY(自作)   ラワン合板積層型
インシュレーター DENON AF-10