SS-312 Study

2011/12/26 作成
2020/06/14 更新

シングルユニット・スピーカー・システム
BGMから音楽鑑賞まで! 本格派小型スピーカーSS-312A
特長 シングルユニット・スピーカー・システム.使用ユニット:フォステックス 6N-FE103 (Rev.AでFF105WK に変更)(10cmフルレンジ).エンクロージャー方式:バスレフ方式(リアダクト)
概略仕様 周波数特性:85Hz~20kHz. 能率:90dB/W (@1m). (オリジナル)
周波数特性:40Hz~25kHz. 能率:88dB/W (@1m). (Rev.A)
寸法:164mm(W) x 630mm(H) x 216mm(D).重量:5.6kg(ケーブル含む).
コスト オリジナル:約1万5千円.
Rev.A:18,848円
履歴 2006年4月完成.2020年4月改良(Rev.A).現在 Kinglet で使用中.

 


コンセプト

本機のコンセプトは、書斎用のサブシステムで使用する、気楽に音楽を楽しむためのスピーカーです。メインシステムのGaudiとは異なり、小音量で、イージーリスニング系の音楽を品よく鳴らすことを目的としています。

本機を設計・製作した時期は、私が病気療養のために休職していた時期に重なります。リハビリを兼ねて製作した次第です。リハビリですから、あまり難しいものには挑戦せず、気楽に造れるものにしようと思いました。
フルレンジ・ユニット1本と、小型エンクロージャーの組み合わせにしました。

丁度手持ちにフォステックス 6N-FE103 を2本持っていたので、それを使うことにしました。このユニットは、以前に SS-307 のミッドレンジ・ドライバーとして購入したものの、その音質に満足できずに、すぐに使うのをやめて放置してあったものです。
ミッドレンジとしては不満足でも、本来のフルレンジとして使えば、満足のいくスピーカーが造れるものと期待しました。

本機とは別にスタンドを製作するのは面倒なので、箱とスタンドを一体化したデザインとします。

愛称とテーマ音楽

元々本機には愛称はなかったのですが、Rev.Aの改良が終わり、期待以上に音質が上がったので、名前を付けたくなりました。
書斎で使うことを前提としているので、Study(スタディ=書斎)と名付けました。また、本機のようなシンプルなコンポーネントは、実験・研究用に使い出があるので、その意味でも Study は本機の愛称にふさわしいと思います。

なお、Rev.Aの改良を終えた後に付けた名前なので、本体のレタリングにはこの名称は含まれていません。

テーマ音楽は、ハイドンの交響曲第101番「時計」の第2楽章としました。
この曲は受験生時代に毎日ラジオで聞いていた曲です。「大学受験ラジオ講座」のテーマ曲だと記憶していたのですが、インターネットで調べてみると、同番組のテーマ曲はブラームスの「大学祝典序曲」だったとのことです。しかし、私の記憶に残っているのは「時計」の方です。もしかしたら、「ラ講」の前後に放送されていた番組(「百万人の英語」など)のテーマ曲だったのかもしれません。
いずれにせよ、「時計」は私の心に強く印象付けられていて、今でもこの曲を聴くと学習意欲が高まります。
[ハイドン交響曲第101番第2楽章(Haydn101-2.mp3)]
演奏: J=F パイヤール指揮 イギリス室内管弦楽団 (CD, Various artists, Classic Library - Haydn, Mozart, BMG CPL-3002A)


仕様

10cmフルレンジ・ユニットを使用したブックシェルフ・スピーカー・システムを製作します。
ただ、ブックシェルフ・スピーカーというのは、使い勝手が良いようでいて悪く、置く場所を見つけるのに苦労することがままあります。そこで、エンクロージャーとスタンドを一体化したデザインとして、設置しやすいようにします。さらに、スタンド部にはCDやDVDを収納できるようにします。

低音の特性は、少なくとも90Hzまでフラットに出すことを目標にしました。90Hzまで確保すれば、BGM的な聴き方では、不満は感じないはずです。

エンクロージャーはバスレフ型とします。基本的にメーカー標準箱に従った設計としますが、歪を抑えるためと、見栄えを良くするために、ダクトは背面に取り付けます。

SPユニット フォステックス 6N-FE103
エンクロージャー内寸 134(W) x 270(H) x 171(D) mm
(6N-FE103 のメーカー標準箱と同じ)
方式 バスレフ方式 (リアダクト方式)
主な材料 15mm厚シナラワン合板
外形寸法・重量 寸法:164(W) x 630(H) x 216(D) mm.重量:5.6kg.
仕上げ 艶消し透明スプレーニス

 


設計

新規技術、主要部品・材料

新規技術は特に採用せず、オーソドックスな設計とします。

スピーカー・ユニット
前述のように、スピーカー・ユニットはSS-307で使用していたフォステックス 6N-FE103(10cm コーン型フルレンジ)を流用しました。
このSPユニットは、限定生産品です。仕様を下表に示します。
方式 10cm シングルコーン フルレンジ・ユニット
インピーダンス 8Ω
最低共振周波数(f0 90Hz
再生周波数帯域 f0~20kHz
出力音圧レベル 90dB/W (@1m)
耐入力 15W (mus.)
m0 2.2g
Q0 0.28
実効振動半径 (a) 4cm
マグネット重量 193g
総重量 0.64kg
標準エンクロージャー方式 バスレフ型
標準エンクロージャー内容積 6L
バッフル穴径 93mm
 
ケーブル
SS-309で使用し、余っていたモガミ電線の同軸型ケーブル NEGLEX 2510 を使用することにしました。
このケーブルは、同軸ケーブルながらスピーカー・ケーブルとして使用すると良い結果が得られると、あるオーディオ雑誌(MJ誌だったと思います)に紹介されていました。それで使ってみようと思いました。
 
 

エンクロージャー設計

箱の寸法・容積は、メーカー標準箱とほとんど同じです。相違点は、バスレフ・ダクトの寸法とその取り付け位置です。SS-309と同様に、リア・ダクト方式としました。

板の接合は単純にイモつぎとします。主に接着剤で接合します。補助的には木ねじも使用しますが、接着剤が固まるまでのハタ金がわりです。
片側の側板だけは接着せず、木ねじのみで固定します。多くのスピーカーは裏板が取り外しできるようになっていますが、本機の場合、メンテナンス時は側板を外します。
この構造はSS-309と類似しています。同じような作業工程で組み立てることにより、紆余曲折なく作業を進めることができます。

バスレフ・ダクトには、水道管用の塩ビチューブを使用します。必要な長さに切って取り付けます。

フロント・バッフルは2枚重ねとし、ユニットの振動をしっかり受け止められるようにします。

バスレフ・ダクトの設計は、ポート共振周波数(fb)がメーカー指定箱と同じになるようにしました。
まず指定箱のfbを計算し、87Hzという結果を得ました。ちなみに、指定箱のポート寸法は50(D) ×88(L)mmです。入手した塩ビ管の内径Dは56mmでした。同じfbとなる長さLは、計算の結果、115mmという値を得ました。

補強材は、箱が小さいので、省略しました。

定尺の15x1820x910mmのシナラワン合板1枚からすべての部品を切り出します。

エンクロージャー寸法図および板取図(SS-312Drawing.pdf)

Micron Wool

吸音材として、SS-309の製作時に余った、日本無機のミクロン・ウールを流用しました。量は少なめとします。

木組みと組み立て手順は、SS-309と同じです。手慣れた方法で、精度よく、かつ正確に組み立てようという魂胆です。
組み立て時には一方の側板(以後、固定側板と呼ぶ)を水平に置いて、その上に他方の側板以外の部品を木工用ボンド使って取り付けていきます。ほぞ・みぞがないイモつぎなので、ボンドが乾くまでは若干接合部をずらすことができますので、前面を優先に面一になるように部品位置を調整します。次に天面を優先します。微調整がすんだら、部品同士木ねじで固定します。
接着しない側板(以後、非固定側板と呼ぶ)を取り付ける側の木口は、サンダーによって出っ張りを削り、さらにビニールテープを木口に貼ることによって機密を保ちます。

How to assemble

仕上げ・塗装に関しては、あまり手間と時間がからない方法を選びました。
シナラワンは木目が綺麗なので、軽くサンダーをかけた後、直接クリアのスプレーニスで塗装をすることにしました。

グリルには、フォステックス純正品を使用しました(型番は失念しました)。
スピーカー・ユニットと、友締めで取り付けます。

ケーブルはユニットに直接半田付けし、そのまま外部に引き出します。もし後でケーブル交換をするとすれば、多くの工数がかかりますが、本機の場合は、その可能性はあまりありません。また、端子を省略すれば、その分コストダウンができるので、直付け・直出し方式を採用しました。

Cable routing

 


 

製作

木工

SS-309の製作時と同様に、家の近くのホームセンターで、板材を購入し、カットもお願いしました。
保証精度は1mmですが、実際には誤差はほとんどありませんでした。

Parts for SS-312

ユニットおよびポート取り付け穴は、自分で加工しました。

バスレフ・ポート用の塩ビ管も、自分で加工しました。加工といっても、長さ115mmに切り出しただけです。

組み立て

設計時に決めたとおりの手順で組み立てました。

Back baffle

箱を組み立てる前に、バスレフ・ダクトをリア・バッフルに、接着剤で、取り付けました。少し後ろに飛び出した状態になっています。後で、ポートを削ったり、延長したりして、バスレフの調整ができるようにするためです。また、入手した塩ビ管の径が、標準箱のポートの径より大きく、そのためポート長が長くなってしまいました(標準:88mm、本機:115mm)。もしポートを完全に箱の中に納めると、ポートの先端がフロント・バッフルに近接してしまいます。

Assembling 1

固定側板を水平に置き、その上にバッフル裏板天板底板を立てて置き、木工用ボンドで接着します。ボンドは万一すき間が生じたときにはそれを埋めるように、たっぷり使います。使用したボンドは一般に良く使われているコニシの木工用ボンドです。速乾タイプではありません。
ボンドが固まらないうちに、前面の木口が面一になるように部品の位置を微調整します。
部品の位置が決まったら、位置がずれないように注意しながら、電動ドリルの刃を予め各部品にあけてある下穴に通して、木口に木ねじ用の下穴をあけます。
木ねじは、1本1本個別にねじ込むのではなく、まず、すべてのねじを浅くねじ込んで置きます。工具は電動ドライバーではなく、普通のドライバーを使います。部品がずれないのを確認しながら、各ねじを少しずつ締めていきます。接合部がずれないぐらい締めこんだところで、後は電動ドライバーでしっかり締めつけます。

ここまでの工程はボンドが固まらないうちに、手早く行います。最終的に木ねじを完全に締め付けると、接合部からボンドがかなりはみ出しますが、とりあえずそのままにしておきます。

Assembling 2

ボンドの粘着力が出てきた段階で、側板がずれないように注意しながら、箱を上下ひっくり返します。そして固定側板を木ねじで固定します。これで、箱としてしっかりと形になります。

Assembling 3

この時点で、ケーブルを通し、吸音材を箱の中に入れておきます。吸音材の量は、勘で決めました。

最後に、非固定側板の取り付けを行います。木口にビニール・テープを貼り、木ねじの下穴の部分をカッターでカットします。木ねじで側板を取り付けて、ようやく箱の形になりました。

 

仕上げ

Finish

まず、電動ドリルに丸型サンドペーパーのアタッチメントをつけて、全体に軽くサンダーをかけました。

塗装は、透明ニス・スプレーで行いました。特に工夫した点はなく、天気がよく、風がないときを選んで、庭でスプレーしました。

リア・バッフルにインスタント・レタリングでブランド名や型番を入れました。

スピーカー・ユニットの取り付け

塗装が充分乾燥した後、スピーカー・ユニットを取り付けました。

ユニットをネジ止めする前に、ケーブルをはんだ付けしました。ケーブルが太すぎて、ユニットに直接はんだ付けすると、ユニットをバッフルに取り付けられなくなるので、細めのOFCワイヤーを継ぎ足しました。

取り付けに使用したネジは、ユニット付属のものです。フォステックス純正グリルを同じネジで友締めしました。

Mounting LS unit 1 Mounting LS unit 2 Mounting LS unit 3 Mounting LS Unit 4
ケーブルの接続 箱におさまった6N-FE103 グリルとともにネジ止め 取り付け完了

設置・調整

予定通り、書斎のサブシステムに設置しました。写真では、チェックのために預かっていた友人のアンプが写っていますが、これは一時的に使用しただけで、本来はMA-205を使用します。また、ソースとしてノートPC(NEC LaVie)を使用していますが、これ以外にもポータブルCDプレーヤー(Kenwood DPC-X517)かICレコーダー(TASCAM DR-1)を使用します(DPC-X517は、故障のため、2011年10月に廃棄しました)。

Installation

本機は造りっぱなしで、測定も調整もしていません。
設置後しばらくの間、エージングのために毎日長時間音楽を鳴らしっぱなしにしました。日々音質が上がっていき、満足のいくレベルに達しました。低音の量感も期待以上で、バランスの良い音に聞こえました。調整の必要はないと判断し、完成ということにしました。というより、ここで気力が尽きてしまい、それ以上いじる気がしなくなった、という方が正確かも知れません。

造りっぱなしというのは、NOBODYの設計ポリシーに反するので、本機にはNOBODYブランドを与えるべきでないという気もしましたが、病気療養中に製作したという特別な事情があり、あえてNOBODYブランドを与えることにしました。


自己評価

外観

下地の仕上げをせず、スプレーニスを吹きつけましたが、シナラワンらしい木目が出ず、ちょっとがっかりです。
過去に塗装技術をちゃんと学んだことがないので、次の機会には、製作前によく勉強しようと思います。

Looks of SS-312

加工・組み立て精度

SS-309と基本的に同じ構造と組み立て方法を採用した本機ですが、SS-309以上の精度で仕上げることができました。学習効果があったため、より容易に組み立てることができました。また、木材を切り出したのは、SS-309のときと同じホームセンターの同じ作業員の方でした。
左下の写真のように、髪の毛一本入るすき間なく、ぴったりと各部品を貼り合わせることができました。
右下の写真のように、床の上に置いたときの水平度も完璧でした。

Accuracy 2Accuracy 1

 

音質

前述のように、重低音こそ出てきませんが、バランスのとれた、好ましい音がします。書斎のBGM用にぴったりだと思います。
MA-205が、角が取れたまろやかな音調なので、本機との組み合わせで、長時間聴いても疲れない、癒し系の音となります。

使い勝手

本機はコンパクトで、なおかつ床に直におけるので、設置が簡単です。ブックシェルフ型は、意外に置き場所に困ります。
スタンド部分にDVDとCDを収納できるようにしましたが、これが予想以上に便利です。
使い勝手はなかなか良いと思います。

まとめ

コンセプト通りのスピーカーができたと思います。気楽にBGMを楽しむのにぴったりです。
本機は構造も簡単で、製作にも特別な技術が要らず、誰でも造れるスピーカーです。気楽に自作オーディオを楽しみたい方にお勧めです。

 


改良(Rev.A)

目的

製作当時はまあまあだと思っていた音質も、じきに不満に感じるようになりました。一番の不満は、低音の伸び、量感ともに物足りないということでした。音量を低めにするとますます低音が物足りなくなるので、BGM用としてもあまり使わなくなりました。

Deteriorated 6N-FE103

2015年に MA-215 Arabesque を製作した時に、本機を試聴用に使おうとしたところ、全然低音が出ないし、かなりショボい音になっていました。
6N-FE103 のエッジが劣化し、気密が保てなくなっていたために、バスレフが効かなくなっていました。

ただ修理するだけでは芸がないので、SPユニットをもっと性能の良いものに交換し、一段グレードを上げることにしました。特に低音に関して、質・量ともに改善することを目標にしました。

詳細は後述しますが、SPユニットとしてフォステックスFF105WK を選びました。

その他に、以下のような目標を掲げました。

(1) 測定データに基づく調整
製作時には測定も調整しなかったのにNOBODYブランドを与えてしまいました。このことは後になって後悔しました。Rev.Aでは、キッチリ測定・調整を行い、SPユニット FF105WK の性能をフルに引き出します。測定方法として、2019年6月に改訂した「とのちメソッド」を初めて適用します。とのちメソッドの有効性の検証も併せて行います。
(2) 設置場所(書斎)にマッチした外観
書斎のインテリアは、明るい色調で統一されています。壁と天井は白、床は白木に近い明るい色の木材、窓枠は白木、カーテンは薄い緑色、といった具合です。本機も、白またはクリーム色の、明るい色調のエンクロージャーとします。
(3) 保守性の向上
アンプとの接続やSPユニットの取り外しが簡単にできるようにします。

主要部品

SPユニット
前述のように、フォステックスFF105WKを選びました。
当初はフォステックス以外のSPユニットを探したのですが、フォステックスの仕様は独特で、フレームの寸法が他社製品と互換性がありません。サブバッフルを使わなければ、本機のバッフルに取り付けられません。サブバッフルを製作するのも面倒ですし、外観に悪影響を及ぼす可能性もあります。やはりフォステックス製品の中から選ぶことにしました。
バックロード・ホーン向きのFEシリーズに対して、FFシリーズはオーソドックスなバスレフ箱に適した設計となっています。今回初めてFFシリーズの存在を知りましたが、ズバリ本機のコンセプトに合うSPユニットだと判断し、採用しました。
なお、本機はメカニカル2ウェイ方式のSPユニットですが、入手するまでシングルコーンのユニットだと思っていました。Fostex FF105WK (front)Fostex FF105WK (back)
方式 10cm メカニカル2ウェイ フルレンジ・ユニット
インピーダンス
最低共振周波数(f0 75Hz
再生周波数帯域 f0 ~ 25kHz
出力音圧レベル 88dB/W (@1m)
耐入力 30W (mus.)
m0 3.4g
Q0 0.41
実効振動半径(a) 4.0cm
マグネット重量 340g
総重量 0.8kg
標準エンクロージャー方式 バスレフ型
標準エンクロージャー内容積 6L
バッフル穴径 93mm
 
スピーカー・ケーブル
同軸ケーブルはスピーカー・ケーブルには不向きだとわかり、他のケーブルに換えることにしました。
読者の方から教えていただいた、カナレ 4S6 というケーブルの姉妹品である 4S6G を採用しました。 4S6は、プロオーディオの世界で定番となっているケーブルだそうです。4線式で、しっかりとした造りのケーブルですが、価格はメーター当たり僅か70円と、激安です。4S6G は芯線の材質をOFCとしたものです。それでもメーター当たり120円(2019年3月現在)と安価なので、迷わず採用しました。Canare 4S6G
鬼目ナット
学生時代にスピーカー設計の教科書として読んでいた本(文献-8)を久々に読み返したところ、高級スピーカーではSPユニットを木ネジでとめたりしない、という記述を見つけました。雌ネジが木材だとネジがしっかり止まらず、SPユニットがバッフルと一体化しないからです。このことは40年前から知っていたはずなのに、すっかり忘れていました。遅まきながら、バッフルに鬼目ナットをねじ込んで、SPユニットをボルト止めすることにしました。
本機はSPケーブルがSPユニットに直付けされているので、ケーブル交換時はSPユニットをバッフルから外す必要があります。また、吸音材の調整も、SPユニット取付穴から行うのが便利です。もし木ネジを使用すると、そういったメンテナンスを行う度にSPユニットを外したり付けたりすることで、ガタが段々大きくなってしまいます。鬼目ナットとボルトを使うことによって、そのような不具合を防げます。
FF105WK のネジ穴に適合するネジはM4なので、M4ネジ用長さ10mmの鬼目ナットを使用します。ムラコシ k-e410 を選択しました。
Murakoshi k-e410

作業内容

(1) サンディング
古い塗装を電動サンダーで削り落とします。
Rounded edges of enclosure of SS-312Sanding enclosure of SS-312ついでにエッジを削って、丸みを帯びた形状にします。
本機は直接床の上に置いて使用しますが、天面がももの高さとなります。部屋の中を歩き回るときに、よくももをぶつけて痛い思いをしていました。
(2) 鬼目ナットの取り付け
まず、鬼目ナットが入れられるように、ネジ穴を電動ドリルで広げます。
この時、ついでにスピーカー・ケーブル引き出し穴も 4S6G の外径に合わせて、広げておきます(穴径:6.5mm、4S6G外径6.4mm)。Insert nut fixed in enclosure of SS-312Driving insert nut into enclosure of SS-312次に、鬼目ナットを六角レンチでバッフルにねじ込みます。今回使用する鬼目ナットは、木材に埋没するタイプなので、埋没するまでねじ込みます。
(3) 再塗装
初心者でも使いやすい、カンペハピオ木部用水性塗料を使用します。色は「オフクリーム」です。実は、これは余りものです。手作りの作業台を塗装する時に使用しましたが、かなり余っていたので本機に使用することにしました。水性塗料用の刷毛を使って塗ります。
Painted enclosures of SS-312AWater paint for wood used for SS-312A一度塗った後一昼夜乾燥させ、電動サンダーで研ぎ出しをしたのち(#400サンドペーパー使用)、もう一度塗ります。
二度目の塗装が終了した時点で、まだムラがありました。もう一度塗ろうかどうか迷いましたが、ムラがあった方がかえって手作り感があって良いと思い、2度塗りでやめておきました。
充分塗装を乾燥させたのち、自動車塗装用コンパウンド(ホワイト車専用)を用いて塗装面を磨き、ロゴを印刷したステッカーを貼ります。用紙には、サンワサプライJP-TA08CLという、A4透明ステッカーを使用します。
(4) SPユニットの取り付け
まず、ケーブルをSPユニットにハンダ付けします。もちろん、「とのちメソッド」で行います。使用するハンダは銅入り銀ハンダです。
次に、ケーブルをSPユニット取り付け穴から入れ、ケーブル引き出し穴から引き出します。
次に、SPユニットをグリルとともにバッフルに取り付けます。ネジには黒のM4ナベネジを用います。長さは20mmです(八幡ネジ#1112)。元々使用していた平ワッシャー(6N-FE103の付属品と思われます)に加え、ゆるみ止めとしてスプリングワッシャーも使用します。
最後に、ケーブルの末端にYラグを取り付けます。使用するYラグは、特にオーディオ用ではなく、一般的な銅に錫メッキを施したものです。RS Pro 613-9485というM8用でAWG22-16に対応するYラグです。圧着工具(RS Pro 534-812)でケーブルに取り付けます。Cable soldered to FF105WKFixing FF105WK together with grilleSolderless terminals attached to the end of the cable
(5) バスレフ・ダクトの調整
ダクト共振周波数fb)の目標値を、FF105WKn取扱説明書に書かれている通り、72Hzとします
今までのダクトのサイズは、56(Φ) x 115(L)mmで、fbは計算上87Hzです。VU50規格の塩ビ管を利用して作りました。その一つ下のVU40管(内径44mm)を少し短く110mmに切れば、fb=72Hzとなります。この塩ビ管を従来のダクトの中に入れて、すき間を軟質パテで埋めることにより、所望のfbを実現します。
ダクトのサイズは計算で求められますが、ボイスコイル・インピーダンスと出力音圧レベル(SPL)の周波数特性を測定することにより、狙い通りのfbになっていることを確認します。
バスレフ・ダクトの調整を行う前に、一旦測定をします。本機製作時には何も測定しないまま完成ということにしてしまったので、いまだに本当に設計通りの特性になっているのかわかりません。ちょうどいい機会なので確認します。
ダクト調整の詳細は、「測定・調整」に後述します。

外観

本機の外観は以下のように変わりました。

Looks of SS-312A

測定・調整

今回初めてとのちメソッドによる測定をスピーカーに適用しました。
SPLと位相の周波数特性は、疑似無響室測定法により測定します。
SPユニットとマイクの距離は、ニアフィールド測定時が約5mm、ファーフィールド測定時が1mです。マージ周波数(fm)は1.4kHzです。
なお、調整中はグリルを外した状態で測定します。

調整前の周波数特性 - ボイスコイル・インピーダンスおよびSPL - を下図に示します。
なお、左右チャンネルともほぼ同じ結果だったので、これ以降右チャンネルのデータのみを掲載します。

Frequency response of SS-312A (before tuning)Impedance curve of SS-312A (before tuning)

設計上の fb は87Hzでしたが、実測値もほぼその通りになっていました。
SPLの周波数特性がほぼ完璧にフラットなのには驚きました。低音も-10dBカットオフが40Hzと、立派な結果となりました。音楽を再生してみても、とても良い音に聞こえます。何も調整しなくてもこのままで十分行ける、という感じです。
なお、80Hz~90Hzのディップはダクトの共振によるものです。測定用マイクが振動板から出る音圧のみを捉えているために、このような特性になるのだと思います(低音域はニアフィールドで測定しています(マイクと振動板の間隔が5mm程度))。この周波数では、ダクトからも正位相の音圧が出るので、聴取位置ではこのようなディップは生じません。
6.8kHzにあるピークはSPユニット固有のものです。FF105WKのカタログ・データに同様なピークが見られます。これはわざとこのような特性にしているのだと思います。超高音域にピークをつくると、躍動感のある生き生きとした音に聞こえる傾向があるからです。

Near-field measurement Far-field measurement
ニアフィールド測定 ファーフィールド測定

未調整でもこれだけ良い特性なのだから調整は省略しようか、という誘惑に負けず、調整を行うことにしました。
調整対象は、バスレフ・ダクトと吸音材です。

今までのダクト(VU50規格の塩ビ管)の中に、より細いパイプ(VU40管)を入れ、fb を目標の72Hzに落とします。

Tuning of duct 1 Tuning of duct 2 Tuning of duct 3
旧ダクトの内側にパテを盛る 新ダクトを挿入する パテをならして出来上がり

再度ボイスコイル・インピーダンスとSPLの周波数特性を測定します。

Impedance curve of SS-312A (w/ new duct)Frequency response of SS-312A (w/ new duct)

fb68Hzとなり、計算値より低くなりました。それ自体大きな問題ではありませんが、高音域の特性が凸凹になってしまいました(上図は調整前の特性図より縦軸を拡大し、凹凸がはっきり見えるようにしています)。ダクトの変更のせいでこうなったのではなく、最初の測定時にミスをしてしまったのが原因のようです。疑似無響室測定に不慣れだったため、ニアフィールドのデータをファーフィールドのデータにマージ(同化吸収)しなければならないところを、その逆にしてしまったため、凹凸がはっきりと出なくなっていました。このことを反省し、以後は計算処理する前の粗データも保存することにしました。
2.8kHzから上に凸凹が発生していますが、これはエンクロージャー内の定在波の影響かもしれません。エンクロージャー内に入れた吸音材は、上面と後面を覆っていますが、側板の内側にはつけていません。側板間の間隔は134mmです。音速を345m/secとして1波長がその間隔に収まる周波数を計算すると、2.6kHzとなります。この側板間の定在波が怪しいので、吸音材を側板の内側に追加することにしました。

Previous sound absorber Additional sound absorber

再度測定した結果、下図のようになりました。右下の図は、REWではなくオシロスコープを用いて測定したインパルス応答です。50usのインパルスを使用しました。

Frequency response of SS-312A (w/ additional sound absorber)Impulse response of SS-312A (w/ additional sound absorber)

完璧といってよい結果が得られました。してやったりです。90Hzから6kHzまでほぼフラットな特性です。6.8kHzのピークを除けば、16kHzまでフラットです。
音楽を再生してみましたが、とても良い感じです。SS-312からこんな良い音が出るとは、嬉しい驚きです。

調整は完了したと判断し、グリルを取り付けて最終確認を行いました。周波数応答とインパルス応答を再度測定しました。
グリルのせいでマイクを十分にSPユニットに近づけられないので、ニアフィールド測定は誤差が若干増えます。

Frequency response of SS-312A (w/ grille)Impulse response of SS-312A (w/ grille)

 

せっかく完成したと思っていたのに、がっかりです。1.2kHz~5kHzの周波数応答が乱れ、インパルス応答の波形も荒れています。
このフォステックス純正のグリルは「怪しい」とは思っていましたが、これほど顕著に歪みを発生させるとは、想像以上でした。グリルのフレームがSPユニットの周りを取り囲む形になっているので、いわゆるキャビティ効果で高音域が歪んでいるのだと思います。
音楽を再生してみても、やはり歪みっぽさを感じます。特にボーカルで、サ行の子音が強調されて聞こえるのが気になります。また、音像定位も少し不安定になった気がしました。

グリル無しの状態ではとても良い音だったので、このままでは諦めがつきませんでした。
フォステックス純正グリルはSPユニットと共締めで取り付けるので、簡単には外せません。そこで、工具なしで簡単に付けたり外したりできるグリルを、急遽製作することにしました。
完成予想図と寸法図を示します。

Rendering of new grille (front) Rendering of new grille (back) Dimension of new grille (front) Dimension of new grille (back)
完成予想図(前面) 完成予想図(背面) 寸法図(前面) 寸法図(背面)

ネットは SS-309 で用いたものと同じものです(端切れをとっておいたのが役に立ちました)。フレームは12mm角のヒノキの角棒、2本のガードバーは6mm径の樹脂製丸棒、補強材は3mm厚のベニヤ板を材料にしています。本当はグリルホルダーを用いてエンクロージャーに取りける方が良いのですが、エンクロージャーを加工する気力がすでになかったので、20mm径の面ファスナーを使用することにしました。

New grille of SS-312A (front) New grille of SS-312A (back) Hook-and-loop fasteners attached on the front baffle of SS-312A New grille attached on the front baffle of SS-312A
グリル前面 グリル背面 バッフルに貼り付けた面ファスナー グリルを取り付けた本機

ネットはステープラーでフレームに固定しました。ガードバー用の樹脂製丸棒は、ネット通販に発注しましたが、コロナ禍のせいで納期がいつになるかわからなないという回答をもらったので、注文はキャンセルしました。代わりに PA-210 Simplicity ように買ったベークライトの丸棒の余りを使いました。ただ、長さが足りなかったので、チャンネル当たり一本しか取れませんでした。ここは妥協です。
設計、部品集め、加工、組み立てを1週間で行いました。一日の作業時間は2~3時間ほどです。私にしては、手際よくやれたと思います。

さて問題は解決したかどうか、あらためて測定を行います。
まず、グリル無しの状態で測定します。

Frequency response of SS-312A (w/ fastener, w/o grille)Impulse response of SS-312A (w/ fastener, w/o grille)

何としたことか! 超高音域で位相の乱れが発生してしまいました。面ファスナーを貼ったぐらいでは影響はなかろうと高をくくっていましたが、影響が現れました。やはりバッフルにはSPユニット以外は何も取り付けず、フラットにしておかなければいけないのだということを痛感しました。
ただ、音楽を再生してみると、音質は良いように感じます。若干音像のフォーカスが悪くなった気がしますが。純正グリル取り付け時と異なり、付帯音のような歪みがないのが救いです。

本機はサブシステム用のスピーカーなので、これ以上深入りはせず、この辺で妥協することにします。
最後に新グリルを取り付けた状態で測定します。

Frequency response of SS-312A (w/ new grille)Impulse response of SS-312A (w/ new grille)

 

ディップが深くなりましたが、グリル無しと相似形の特性となりました。
聴感上の音質はあまり変わらないことが分かりました。これは不幸中の幸いです。音楽鑑賞時は、SPユニット剥き出しの状態では、音楽を聴く気分が出ないからです。人によっては気にならないと思いますが、私はメカメカしいものが好きではないので、SPユニットは見えないほうが好ましいと感じます。

 

自己評価

外観

外観は、グリルを替えたことで印象が変わりました。
たまたま SS-309 で用いた茶色のサランネットの余りがあったので、それを流用しましたが、結果的に良かったと思います。このサランネットの色が、エンクロージャーのクリーム色と同系色なので、お互い良くマッチしています。クリーム色の塗料も余りものでしたが、偶然ながら良い組み合わせとなりました。

ムラや刷毛スジのある塗装も、見慣れるにつれ味わいを感じるようになりました(これは手前味噌かも?)。
また、今回初めて音響測定データをもとに調整を行ったので、それを記念して側面に実測データを貼りました。これが外観上のアクセントになっています。

自作品の外観に満足することは滅多にありませんが、本機には満足しました。

Looks of improved SS-312A (front)Looks of improved SS-312A (back)SS-312A in Kinglet systemLooks of improved SS-312A (side)

右上の画像は、本機を書斎用サブシステム Kinglet に組み込んだ様子です。システムレベル・チューニングを行う前に撮った画像なので、スピーカーの位置は暫定的なものです。

音質

音質に関しては、期待以上の成果が得られました。
特筆すべきは低音です。鬼太鼓座の大太鼓の音を本機で初めて聴いたときは、腰を抜かしそうになりました。大太鼓の唸り音が聞こえてきたからです。この唸り音の周波数は28Hzで、普通のスピーカーでは全然聞こえません。

私はかつてあるオーディオショップの準常連だったことがあります。その店にあるほとんどすべてのスピーカーを試聴しましたが、20cm以下のウーファーのスピーカーでこの唸り音を再現できるスピーカーは一つもありませんでした。打ち込む時の「ドーン」という音が聞こえるだけです。中には、それも「トン」とか「ポン」とかおもちゃの太鼓のような音しか出ないものもありました。オーディオショップでよくこんなスピーカーが売られているものだと、呆れた覚えがあります。

本機でも28Hzの超低音が完全に再現できるわけではありませんが、部分的に聞こえてくるだけでも大したものだと思います。他の重低音が含まれるソースを再生しても、重量感のある堂々とした低音が出てきます。

この豊かな低音は、自作オーディオならではのノウハウにより実現しました。
ダクトの共振周波数(fb)が目標の72Hzより低い66~67Hzとなっていますが、わざとこのままにしています。さらに、吸音材を多めに入れて、ダクトの共振を抑制しています。このことにより、ローエンドが伸びる(-10dBカットオフ=40Hz)とともに、ややだら下がりの特性となっています(上記周波数特性図を参照)。疑似無響室測定ではその様な特性ですが、実際には床や壁の影響で低音が増強されます。最終的には-10dBカットオフが30Hzぐらいなる見込みです(まだシステムレベル・チューニング前なので正確な数値は言えません)。このような理由で、28Hzの超低音が、-10dB程度減衰しているものの、しっかり聞こえるのです。

このような床や壁を利用したチューニングは SS-309 でも実施済みで、効果を上げています。メーカー製スピーカーではあり得ない手法です。
部屋の音響に合わせた設計やチューニングこそ自作オーディオの醍醐味です。複雑なメカ(バックロード・ホーン等)や回路(グラフィック・イコライザー等)を用いず、シンプルなコンポーネントで高音質を実現できます。

一方で、高音域の音質への満足度は今一つです。
これはフルレンジ・ユニットの宿命ですが、高音域は分割振動域となるので、左右チャンネルで微妙に音圧や位相に差が出ます。結果として、音像がぼやけたり定位が不安定になったりします。おまけにフロントバッフルに貼った面ファスナーが意外なほど高音域を歪ませてしまいました。
FF105WKの持つ7kHz近辺のピークは、音色的にはスパイスのような効果を与え、音に躍動感や生命感を加えますが、位相変位を発生させるので、音像定位を不安定にします。

今回は音場再現のチェックにテスト・レコード「2xHD Audiophile Speaker Set-Up (DSD5.6M)」を使用しました(レコードと言ってもアナログ盤ではなくダウンロードです)。トラック番号2を再生したとき、本来右側から聞こえるはずのトランペットの音が左から聞こえてきました。Gaudi II では問題なく定位するのに、ちょっとがっかりしました。
ただ、このテスト・レコードの録音は残響の多いスタジオあるいはコンサート・ホールで行われていて、音場再現が難しいということもあります。右側に定位すべき楽器の音が左チャンネルにも相当のレベルで含まれています。正確に左右チャンネルの音圧と位相が一致していないと、定位が不安定になります。
聞きなれたジャズやポップスのレコードを聴く限り、定位は安定して聞こえました。ハイエンドのレベルには達していないものの、普通に音楽を聴く分には充分な性能だと思います。

全体としては、本機の音質に満足です。とにかく10cm口径のSPユニットでこれだけの重低音を出すスピーカーは、私の50年に及ぶオーディオ歴の中でも初めてです。高音域にはやや不満があると述べましたが、本当にうるさいことを言えばの話しです。普通に音楽を聴くには充分な音質だと思います。BGMから音楽鑑賞まで、色々楽しめるスピーカーだと思います。

ところで、今回の改良点のうち、どれが最も効果があったのでしょうか。
正直言って、よく分かりません。本来なら、一つ対策を講じるごとに音質評価をすべきでしょうが、私の体力では無理です。今回のように、どうしても複数の対策を同時に実施することになります。以下は推測ですが、自分なりの解釈を記したいと思います。

最も効果があったのは、SPユニットの変更だということは疑いの余地がありません。
次に効果があったのは、SPユニットの固定方法を木ネジからビス・ナットに替えたことだと推測します。フルレンジ・ユニットは超高音域まで受け持ちます。SPユニットがしっかりバッフルに固定されていないと、高音域から超高音域にかけての歪みが増大します。木ネジでは、しっかり固定されているように見えても、ミクロのスケールで見れば多少のがたつきがあります。
スピーカー・ケーブルの変更や圧着端子の使用は、余り影響がなかったと思います。ケーブルよりも、バッフル面に貼った面ファスナーの方がはるかに影響が大きかったと思います。

使い勝手

Cable of SS-312A

使い勝手も向上しました。
改良前は、スピーカー・ケーブルのアンプ側はハンダ付けで接続していました。ご想像の通り、ケーブルの接続だけでなく、ただ外すだけでも非常に面倒です。Rev.Aでは末端に圧着端子(M8のYラグ)を付けました。接続が簡単になったので、調整時には大いに助かりました。今後も実験やパワーアンプの比較試聴などを億劫がらずに行えると思います。

今回採用したケーブル、カナレ 4S6G は 元々使っていた NEGLEX 2510 よりも少し太いのですが、可撓性が高く、扱いやすいケーブルです。


まとめ

期待を大きく上回る音質改善を実現できました。
BGM用にも今一つだった本機が、音楽鑑賞に耐えうる本格的スピーカーに生まれ変わりました。パワーアンプの音質チェックにも最適です。
音量を低くしても充分に低音が出るので、BGM用としてもばっちりです。

外観もより私の好みにあったものとなり、眺めているだけでもいい気分になります。外観も音質のうちなので、今後とも外観にこだわりたいと思います。

音響測定データをもとにスピーカーの調整を行ったのは始めてでしたが、得るものが多かったと思います。
最初は戸惑うことがあり、なかなか能率が上がりませんでしたが、今ではだいぶ手際よく測定ができるようになりました。さらに習熟すれば、テストレコードを聴きながら調整するよりも、ずっと手早く調整ができるようになると思います。

今まで本機にはBOMがなかったのですが、今回新たに作成しました。ご参考までに公開します。
BOM


 

測定データは音質を表すか?

これは大変興味深い議論なので、いずれは補足資料に詳細をまとめようと考えていますが、ここではRev.Aの経験から学んだことを述べようと思います。

測定データはあてにならないという考え方は根強く存在します。かつての私もそうでした。
しかし、実際に測定データをもとに調整し、調整するごとに試聴を行うと、見事に測定データと聴感上の音質が一致しているように聞こえる、ということを体験しました。もちろん、これには心理的バイアスが作用している可能性はあります。測定データを見てから試聴するため、先入観が影響する可能性を排除できません。

先入観の影響を弱めるために、試聴には時間をかけるようにしています。多くの楽器の音を聴くようにしています。また、テストレコードだけでなく、耳にタコができるぐらい聴きこんだ愛聴盤も試聴に用います。
やはり測定データは音質をよく表していると感じます。

ただし、測定データを数値化するのは良くないと思います。数値化すると、多くの情報が切り捨てられてしまうからです。
例えば、周波数特性を「40Hz~25kHz」という数値で表しても、これではどんな音質かよく分かりません。同様に、歪率をTHDに代表させ、0.001%のように数値で表しても、どの程度歪んでいるのか全然分かりません。
測定データは数値化せずに、チャートで表す方が音質を反映します。

もう一つ重要なことは、周波数領域と時間領域の両方の測定を行うことです。測定データは多面的であることが好ましいのです。一つの側面だけを重視すると、問題を見過ごす可能性が高くなります。
ウォーターフォール・チャートは、周波数領域と時間領域の特性を一つのチャートで表せます。REWで簡単に作成できるので、今後は活用しようと思います。

測定データと音質が最も密接に関係しているのが、音場再現です。
音場再現性能は、モノラル信号を再生した時に、左右チャンネルで全く同じ音圧、同じ位相の音波を出せるかどうかにかかっています。特に、倍音成分を含む高音域から超高音域にかけての性能が重要です。この帯域で位相ずれがあると、音像がぼやけたり、定位が不安定になったりします。もちろん、左右チャンネルで同じだけ位相が変位すれば良いのですが、スピーカーの位相ずれはアンプほど規則的ではないので、左右で位相差が発生します。
測定データから音色や音調を予測することは難しいですが、音像のぼやけや定位の不安定さは分かります。

今後とも、測定データと音質の関連性を追及していきたいと思います。