Gaudi の問題点

2017/11/21 作成
2018/10/03 更新

長年にわたり Gaudi(ガウディ)を使い続ける中で、様々な改良を施してきました。しかし、システム設計を変更しない限り解決できない問題が未解決のまま残りました。このページでは、それらの問題を紹介します。ここで紹介する問題を解決することが、Gaudi II の設計目標の中で最も優先度の高い目標です。

低ダンピング・ファクター

[2018/03/07 訂正] {ここで述べている自説ーーツィーター・アンプのDFが低いと高音が歪むーーは、私の思い込みに過ぎない可能性が出てきたので、いったん撤回したいと思います。後日再測定したところ、下記のデータでは、DFと波形のひずみとの関係を説明できていないということが判明したからです。波形にオーバーシュートやリンギングが見られるのは、チャンネル・デバイダー(CD-211B)の回路が不安定になっていることが原因でした。加えて、ツィーター用に高DFアンプであるMA-215 Arabesqueを使用してみたところ、波形がほとんど変わらないことが分かりました。より精度の高い測定ができるようになれば、DFと音質との関係がはっきり分かるかもしれませんが、現段階では確かな証拠を得られていません}

Gaudi 設計時(1974年)には、ダンピング・ファクター(DF)を重視していませんでした。DFは10ぐらいあれば充分で、それ以上あっても効果は感じられない、という説が有力だったからです。
当時は、アンプ類はすべて管球式にするつもりだった、ということもあります。半導体アンプは技術的に難しく、アマチュアにはハードルが高すぎると思っていたからです。管球アンプでは高DFは望めないので、成り行き上、DFは考慮しないことにしました。

DFは低音の特性に影響する、というのが従来からの定説です。しかし、実際には、ウーファーはそれ自体ダンパーやエッジで機械的に充分な制動をかけているものが多く、アンプのDFはそれ程影響しません。グッドマンの Axiom 80 のようなふらふらコーンのスピーカー・ユニットでない限りDFは気にしなくてよいと思います。

自分自身の経験から、DFはむしろ高音域で重要だと考えるようになりました。人間の耳は高音域の歪に敏感だからです。
ツィーター・アンプのDFが低いと、パルス的な音を出した時に振動板が余計な振動をすることにより、キャラクターの強い音になりがちです。
マルチアンプ・システムではパワーアンプとスピーカー・ユニットが直結なので、高DFアンプの効果はモノアンプ・システム以上にはっきりと感じられます。

下図は Gaudi を使って観測した実際の波形です。測定の精度が低いので正確な波形ではありませんが、参考になると思います。
ツィーター(フォステックス T925A)から6.8kHzの正弦波を1周期だけ出力させた時に、マイクロフォンから出力された波形です。

Tweeter response

【測定条件】
波形生成:efu氏作 WaveGene … 1波のトーンバースト波を作り、それを編集して作成
信号発生器: パナソニック Lets Note CF-N9 + KORG AudioGate 4 + KORG DS-DAC-10
アンプ:PA-210 + CD-211B + MA-208
ツィーター:Fostex T925A
マイクロフォン: オーディオテクニカ AT822 + AT8410a … 聴取位置に設置
マイクアンプ: TASCAM DR-1
オシロスコープ:パナソニック Lets Note CF-N9 + Pico Technology PicoScope 6
+ Pico Technology PicoScope 4262

 





図中、赤の点線は本来の1周期だけの正弦波を表しています。その後にさらに1.5周期ほど付け加わっています。しかも周期が少し伸びています。これはツィーターの振動系の共振による現象と推測されます。
この共振は、高DFアンプを用いて制動をかけることによって抑えられると考えています。


凸凹の周波数特性

Gaudi の周波数特性はフラットではありません。しかも、かなり凸凹です。
聴感上それ程凸凹のように感じられないのですが、測定するたびにがっかりするような結果を得ています。
[2018/03/07 追記] {読者の方から、普通に測定すればピーク/ディップが出るのは当たり前、という助言を頂きました。メーカーのカタログに載っている周波数特性は、きれいな曲線に見せるために平滑化されているそうです}
[2018/10/02 追記] {ピーク/ディップの発生は、後述するタイム・アライメントが原因の一つであることがわかりました。各スピーカーユニットからの音波が聴取位置に達するタイミングにずれがあると、大きなピーク/ディップが発生するそうです。私が学生時代から教科書代わりにしている本に書いてありました(文献#8)。灯台下暗しです}

下図は測定例です。

Frequency response

 

【測定条件】
波形生成:John Mulcahy氏作 Room EQ Wizard … 20Hz-20kHz 正弦波スイープ
+ パナソニック Lets Note CF-N9 + KORG DS-DAC-10
測定対象システム:Gaudi (左チャンネルのみ)
マイクロフォン: Dayton Audio UMM6 … 聴取位置に設置
マイクアンプ: UMM6 に内蔵
測定装置: パナソニック Lets Note CF-N9 + John Mulcahy氏作 Room EQ Wizard

(クリックで拡大)

 

 

全体的に右肩下がりの特性になっています。
これは、スコーカーのフォステックス D1405+H400の特性が右肩下がりだからです。受け持ち帯域は800~6800Hzですが、その帯域全体で右肩下がりの特性になっています。ウーファーのレベルを下げたり、ツィーターのレベルを上げたりすると、各ユニット間のつながりが悪くなってしまいます。
様々な楽器の音を再生しながら、聴感上一番自然に聞こえるように調整した結果が、上図の特性です。

かなりひどいデータですが、聴感上それ程違和感はありません。ヘッドホンの音と聞き比べても、ほんの少し高音が物足りないなあ、と感じられる程度です。友人に聴いてもらっても、特に不自然さはないといわれます。

フラットでない特性がフラットに聞こえるのは、歪が音量に影響を与えるため、音圧(物理量)と音量(心理量)が一致しないというのが理由の一つだと考えています。例えば、高音の落ち込みがあっても、高音に歪みや付帯音があると、音量を押し上げ、高音が不足しているように聞こえない、という場合が考えられます。
もう一つは、慣れだと思います。聞き慣れた音は良い音に聞こえがちです。

現在フラットに聞こえても、改良を重ねるたびに歪が減り、音圧と音量の差が縮まることが考えられます。周波数特性を凸凹にする要因を発見し、それらを解消する努力が必要です。


調整不十分な部屋の音響

極端な落ち込みが所々にあるのは、部屋に定在波が発生しているためと思われます。我が家は高断熱・高気密住宅で、音の逃げ場がありません。Gaudi を設置しているリビングルームは、極端にライブです。今まである程度の対策は実施してきましたが、本格的な対策はこれからです。

今までも思いつく対策は実施してきました。しかし、実測データに基づいた対策ではなく、単に勘まかせの対策でした。
そもそも私には測定技術がなく、部屋の音響のどこが問題なのかを把握できていません。現在測定技術を勉強中です。既に測定器を2台入手していますので(2018年10月現在)、それを使って腕を磨こうと思います。

専門知識があってやったことではありませんが、いくつかの対策は効果がありました。
最も効果があったのは、スピーカーに向き合う壁(立ち上がり壁)に設置した吸音パネルです。このパネルの設置前は、音像がまとまらず、定位も不安定でした。定位が不安定というと、真っ先にスピーカーの性能が疑われますが、スピーカーよりも部屋の性能の方が重要だということを、学びました。

次に効果があったのは、スピーカー背後に設置した自作音調パネルです。
その他の対策は、聴感上の効果がはっきりしません。
今後は測定データを基に、お金と時間をあまりかけず、かつ効果的な対策を実施していくつもりです。

 


未調整のタイム・アラインメント

Positions of tweeter and squawker

各スピーカー・ユニットから聴取位置までの距離は、すべて等距離でなければなりません。音速は意外に遅いので、距離が異なると、リスナーの耳への音波の到達時点が、ユニットごとに違ってきます。特に、波長の短い高音域で問題となります。

元々は、ツィーターの位置を前後にずらすことによってタイム・アラインメントを調整するようにしていました。しかし、2012年にスコーカーをホーン型に換えてから、この方法では調整ができなくなりました。スコーカー・ドライバーがかなり奥に引っ込んだ位置にあり、ツィーターをその位置まで引っ込められないからです。

チャンネル・デバイダーにタイム・アラインメント調整機能を追加する必要があります。Gaudi II で実現するつもりです。