Gaudi II が目指す音

2017/08/22 作成
2022/03/15 更新

[2020/12/11 訂正] {このページの記述は、禅問答的で分かりにくかったので、全面的に書き換えました。趣旨は変えていません}

Gausi II では、 Hi-Fi(ハイファイ、High Fidelity、高忠実度)を目指します。Hi-Fi は日本ではほとんど死語と化しているので、今風に Hi-Res(ハイレゾ、High Resolution、高解像度)と言ったほうがよいかもしれません。

Hi-Fi の定義

Hi-Fi の定義は意外に難しいものです。
一言で言えば、原信号に対して、何も足さず、何も引かず、何も変えないことです。つまり、雑音、歪、周波数特性の偏差を、限りなくゼロに近いレベルに抑えこむことです。
原信号とは、ソースに含まれる音声信号(デジタル・ソースの場合は、音声信号を符号化したデータ)のことです。
私が考える Hi-Fi とは、原信号を忠実に音に変換することであり、楽器の生音を再現することではありません。

原信号は、ミュージシャンが創り上げた音を記録したものです。マイクロフォンでキャッチした音をそのまま記録したものではありません。
録音された音は、ミキシング・マスタリング工程を通して編集および加工されます。その加工された音がメディアに記録されて、市場に出るわけです。特にデジタル時代になってからは、SE(Sound Effect=音響効果)が容易になり、原音とはかなり異なるレベルまで加工することも珍しくなくなりました。こういった加工も音楽表現の一部なので、忠実に再現する必要があります。
なお、ここでいうミュージシャンとは、演奏者のみならず、作曲者、編曲者、録音技術者、プロデューサー等、音楽造りに関わる全てのスタッフを含みます。

以前Gaudi で経験したことですが、聴取位置にマイクを置いて音圧を測定し、周波数特性がフラットになるように調整すると、聴感上はフラットに聞こえませんでした。逆に、聴感上フラットになるように調整すると、測定データがフラットではありませんでした。
このことから、聴感上の Hi-Fi を心理的Hi-Fi と名付け、物理的Hi-Fiとは一致しないものだと結論付けました(詳しくは、こちら)。
今は、それは誤解だったということがわかっています。

この誤解が生じた理由は二つあります。
一つは、私の測定技術が未熟で、真の物理特性を測定できていなかったことです。特にスピーカーから出る音をマイクを使って測定するには、高度な技術が必要ですが、そのこと自体をわかっていませんでした。
もう一つは、人間の知覚の仕組みを考慮していなかったことです。人間は、鼓膜の振動をそのまま知覚することはできません。耳からの情報は脳内で複雑な処理が施された上で、意識に上ってきます。この情報処理には、個人の経験、知識、意思、関心、訓練などが強く影響します。信念、思い込み、先入観で音質が大きく左右されます。

人間の知覚には自動補正というべき機能が備わっています。
スピーカーから発せられた音は、部屋の音響によって、リスナーの耳に届くまでに大きく歪んでしまいますが、知覚の自動補正機能によりその程度は軽くなります。これは人間が部屋の音響を学習し、その結果脳内で自動補正をすることによって起こります。人間は無意識のうちにも音源が発する音を聞き取ろうとするし、かなりのところまでそれは実現します。
例えば次のような経験があります。Gaudiから出る音を聴取位置に置いたマイクロフォンで録音し、その録音をヘッドホンで聴いてみたところ、過剰に音が響いているように聞こえました。Gaudiを設置している部屋がライブなので、当然といえば当然なのですが、直接Gaudiの音を聴くと、響いているように聞こえません。脳内の情報処理により、部屋の音響による響きが消されてしまった結果です。

従って、Hi-Fi システムを実現するためには、システムそのもの(部屋を含まない)が Hi-Fi であることが第一条件となります。言い換えれば、測定データから反射音成分を除去した、疑似無響室測定の結果が良好であることが、Hi-Fi システムの第一条件だということです。

プラシーボ効果

プラシーボ効果という言葉がありますが、思い込みによって、音質が実際より良く聞こえることを意味します。上記の知覚の仕組みの一部です。
プラシーボ効果の影響力はなかなかのもので、これも音質を語る上で無視できない存在です。

自作オーディオの場合、プラシーボ効果は強烈です。人間だれしも、自分で工夫したことや苦労したことは過大評価します。自分で造ったものだからというだけで、すごくいいものという思い込みが起こります。
自分で言うのもなんですが、製作者自身の製作直後の自己評価は当てになりません。欠点がわかっていても、「あばたにえくぼ」で無視してしまいます。
ただ、時がたつにつれプラシーボ効果は弱まり、やがては欠点が気になるようになります。

外観の重要性

オーディオ装置にとって、外観は重要です。外観がカッコよければ、プラシーボ効果により音質が向上します。

自作オーディオの場合、外観に特に注意を払わなくても、自分で造ったものは自動的にカッコ良く感じてしまいます。
しかし、Gaudi II はリビングルームに設置するので、製作者自身の自己満足だけではなく、家族や友人から見てもカッコ良くなければなりません。

プロダクト・デザインにおいては、テーマ性が重要だということを最近学びました。
Gaudi II の外観のテーマは「居心地の良さ」とします。リビングルームで使うシステムとしてふさわしいテーマだと思います。
目立ち過ぎず、インテリアに調和するデザインで、なおかつ穏やかな存在感があり、インテリアに埋没しないデザインを目指します。

操作性の重要性

操作性も音質に影響を及ぼすと考えています。
良い操作性が音質を上げるとまでは言いませんが、悪い操作性は逆プラシーボ効果を生み、音質を下げます。

リモコンの導入などで、なるべくユーザーにストレスを感じさせない操作性を実現する必要があります。

まとめ

物理的 Hi-Fi をベースに、プラシーボ効果などの心理的効果を加えた、Super Hi-Fi をGaudi II が目指す音とします。

物理的 Hi-Fi は測定可能なので、測定データにこだわった評価を行います。
コンポーネント単体ではなく、システム全体の測定を行い、歪、雑音、周波数特性の偏差を求め、それらを限りなくゼロに近づける調整を行います。

Gaudi では自分が良いと思う音を追求していましたが、Gaudi II では、家族・友人など自分以外の人に褒めてもらえる音を造ることも目標にしたいと思います。特に女性に褒めてもらえるように頑張りたいと思います(女性の方が男性より耳が良いから)。