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 ホーム > NOBODY > MA-201  2010/12/26 作成

MA-201: 管球式ステレオ・パワーアンプ 

MA-201Description: 管球式ステレオ・パワーアンプ.使用真空管:6AU6A x2 (初段)、6FQ7 x2 (位相反転段)、6CA7/EL34 x4 (出力段)、5AR4 x2 (電源).回路方式:マラード型.出力段:UL接続PP.最大出力:30W+30W (8オーム).周波数特性:12Hz-50kHz.電圧増幅度:18dB.NFB:20dB.入力インピーダンス:250kΩ.
Dimensions: 260mm(W) x 170mm(H) x 450mm(D).重量:16.5kg.
Cost: 約6万円.
History: 1974年製作.1995年、2004年、2009年に改良.現在はGaudiでウーファー用アンプとして活躍中.



コンセプト

MA-201は記念すべきNOBODYブランドの第1号機でした。私が目指したものは、ホーン型ミッドレンジ用のハイグレードなパワーアンプでした。生まれて初めての高級オーディオ装置自作への挑戦でした。
ミッドレンジ用とはいえ、当時はまだマルチアンプ方式を実現しておらず、当面はフルレンジで使用する予定だったので、スペックとしてはフルレンジにしました。ホーン型ユニットは高能率なので、パワーは15W〜20W程度とし、S/N比重視でNFBを20dBぐらいかけるものとしました。

このように書くと、いっぱしのエンジニアのようですが、当時私は自分で回路を設計することはできませんでした。そこで、オーディオ関連の本や雑誌の記事の中から自分の要求に合う設計例を探しました。
上杉佳郎著『管球式ステレオアンプ製作80選(上巻)』という本の中に、ちょうどよい製作記事を見つけました。回路設計はあの名機 Marantz Model 8B を元にしていて、私の要求通りのスペックでした。使用部品はすべて秋葉原で手に入るものでした。これは良いということで、この記事を教科書にしてアンプを作ることにしました。

その後 Marantz Model 8B を試聴する機会がありました。1974年のオーディオフェアで開催されたイベントでのことで、講師は上杉佳郎氏でした。私はその音質の高さに感心し、「なぜこんな良いアンプがすでに生産終了になっているのだろう」と不思議に思いました。

回路設計

前述のように、私のオリジナルの設計ではありません。ほとんど原設計のまま作るつもりでしたが、少しだけ回路を変更したところがあります。それは電源の整流に整流管を採用したことです。
原設計では電源トランスに LUX 5A68 が採用されていましたが、これが入手できず、代わりに LUX 9A68 を購入しました。9A68 は 5A68 よりもB電源用の巻き線の電圧が高かったため、整流管で電圧降下させることにより、原設計と同じB電圧を得るようにしました。
このときは窮余の一策として整流管を採用したのですが、後々整流管の良さを再認識することにつながりました。つまり、整流管にはスイッチング・ノイズがない、B電源がスロースタートするのでバイパス・コンデンサーにストレスを与えない、といったメリットがあるということがわかったのです。

出力段の接続は、原設計通りに3極管接続としました。最大出力は20Wでした。
回路図:1995年の改良時に作成したもの)

実装設計

ケースは管球式パワーアンプ用の艶消し黒の塗装済みのケースを用いました。リード社製GT-1というもので、手ごろな価格ながら、少しマッキントシュ風で見栄えのするケースです。ただし、溶接が弱いのが欠点で、組み立て中に一部の溶接がはがれてしまいました。
部品配置に関しては、オリジナルとケースの寸法が違うのと、2本の整流管を採用したため、自分で再設計しました。実装密度がかなり高くなってしまい、ケース上面にブロック型電解コンデンサーを付けるスペースがなくなってしまいましたので、ケース内部に配置しました。

AC入力にはインレットを使用し、電源コードを簡単に交換できるようにしました。後で電源コードを交換してみてわかったことですが、電源コードにより音が変わるのです。しかしこの時代、友人たちにそのことを話しても、誰も信じてくれませんでした。

製作

特に注意を払ったのが半田付けです。この頃、1972年に製作したアンプ(6BM8s)が動作不安定になっていました。半田がすべてぼろぼろになっていたためです。まだ完成後2年しか経っていないのにそうなってしまったのは、自分の半田付けの技術が未熟だったからです。
私は半田付けする部分にペーストを塗ってから、半田ごてを当てるようにしていました。そうすると比較的短い時間で見た目きれいに半田付けできるからです。しかしそのやり方では、焼き切れなかったペーストが半田内に残り、半田にスが入ったようになります。すると経年変化で半田がぼろぼろになってしまうのです。
本機では、半田に含まれているペースト以外は、ペーストを使わないようにしました。また、部品にダメージを与えない範囲で、なるべく長くこてをあてるようにしました。少なくとも煙が出なくなるまで(ペーストを焼き切るまで)こてをあてるようにしました。

ケース内の配線は、見た目に美しいように、きっちりと並行・直角配線をし、ナイロン糸でワイヤーを束ねました。仕上がりはまずまずで、友達に見せて自慢したりしました。
しかし後年わかったことですが、見た目きれいな配線は、実は音質的にはマイナスなのです。並行・直角配線により、配線長が伸びます。当時は電源ラインなどは長く伸ばしても大丈夫と思われていましたが、しかし実際には長くしてよいワイヤーはなく、最短距離で結ぶほうが良いのです(A電源配線を除く)。
また、ワイヤーを直角に曲げると、インダクタンスが増しますし、導体の表面に微小クラックが発生するので、電流の流れがスムーズでなくなります。これは部品のリード線に関しても同様です。

自己評価

当初、本機は成功作だと思っていました。まず、聴感上ノイズが全く無いところが気に入りました。いかにも管球アンプらしいふっくらとした音調にも好感を持てました。しかし、聴きこむにつれて、徐々にどこかけむったいような、今一つ透明度が足りない音が気になるようになりました。後年三度にわたり大幅な改良をすることになりました。

半田付けに関してはパーフェクトだと自負しています。2010年10月現在製作後36年が経過していますが、今までに半田付けの不良は1件も発生していません。半田付けがしっかりしていて、消耗部品が交換可能な限り、アンプは使い続けることができると思っています。MA-201の耐用年数は50年以上と推定します。
因みに、サブシステムで某一流メーカーのアンプを使っていたことがありますが、製造後20年経過した時点で半田付け箇所がすべてぼろぼろになって修理不能になってしまったという経験があります。

三度にわたり大幅な改良を施したことにより、音質はかなり改善されました。しかし、まだ改良できていない点があります。
B電源のデカップリング回路が左右チャンネルで共通になっていることです。そのためチャンネル・セパレーションが悪くなっています。

改良

Rev. A (1995年)

ヒューズが頻繁に飛ぶようになったことがきっかけで、修理および改良を施すことにしました。対策内容は、以下の通りです。

  1. すべての真空管を新品に変える。
  2. すべての電解コンデンサーをオーディオ・グレードの新品に変える。
  3. 出力段の配線を並行・直角配線から最短距離配線に変える。
  4. 出力段を三極管接続からUL接続に変える。
  5. AC電源のインレットを廃止し、電源コードを直付けにする。
  6. 電源コードを電流容量の大きなものに変える。
  7. 電源1次側にライン・ノイズ・フィルターを挿入し、ホット―コールド間の中間電位をFG(フレーム・グラウンド)とする。
  8. 電源スイッチを電流容量の大きなものに交換する。(6A --> 20A)

対策3は劇的効果がありました。それまでもやもやと霞がかかっていたような音が、クリアでパンチのある音に生まれ変わりました。この成功体験から、その後のすべての自作アンプで、見た目のきれいさよりも配線長を優先した配線を心がけるようにしました。

MA-201の内部配線

対策4の実施により、最大出力は30W+30Wになりました。

対策7は他のNOBODYブランドのアンプにも実施することにしました。どのアンプもFGは1点でSG(シグナル・グラウンド)につながれているので、どのアンプもSGが同電位ということになります。アンプ同士を接続した場合(例えばプリアンプとチャンデバ)、接続コードのグラウンド線に信号電流以外の余計な電流が流れなくなるので、音質的に有利です。
また、FGが中間電位であれば、ACプラグをどちら向きにさしてもよいということになります。しかし、実際に逆ざししてみたら、なぜか音質が劣化してしまいました。おそらく、電源トランス1次巻線の巻き始めの電位が機器間で不統一になったためと思われます。今ではシステム内ですべての機器の電源を正しい極性に揃えています。

ライン・ノイズ・フィルター

余談ですが、これらの改良を終えて測定をしているときに、誤って片方の出力トランスを壊してしまいました。電源を入れたまま負荷をつなぎ換えたためです。LUX OY-15はもう二度と手に入らないだろうなと思い途方に暮れてしまいましたが、気を取り直して秋葉原に探しに行きました。中古でよいと思いつつ探していたら、何と新品を見つけました。かつてLUXの下請けだったトランス屋さんが、LUXの許可を得てLUXブランドで生産したものでした。助かりました。もしOY-15が手に入らなかったら、MA-201は廃棄してしまったかも知れません。

Rev. B (2004年)

出力のプッシュ式端子を半田付け可能な端子台に交換しました。また、入力のサブソニック・フィルターを廃止しました。端子台は直接ケースに取り付けることはできなかったので、アルミ板でサブパネルを製作しました。

改良後、早速スピーカー・ケーブルを出力端子に半田付けしました。若干ですが、おとなしい音になったというか、アンプの存在感が薄れたような気がしました。それだけ、歪が減少したのだと解釈しています。

Output terminal of MA-201

Rev. C (2009年)

そろそろ老朽化してきたと感じたので、真空管と電解コンデンサーをすべて新品に交換することにしました。電解コンデンサーの交換には内部配線をいじる必要があるので、ついでに回路を少し変えることにしました。
それまでACバランスとDCバランスを備えていたのですが、これらを廃止し、回路をよりシンプルにすることにしました。経験上、バランスが少しぐらいずれていても、音質にはほとんど影響がないことがわかっていたからです。「無くても良さそうなものは無くした方がよい」というのが最近の私の考え方です。そもそも、直流電流と信号電流が重畳する箇所に可変抵抗器を使うというのはよくありません。直流電流によって接点が劣化するからです。
その他にも細かい改良を加え、回路図を描き直しました。
新回路図

真空管にはなるべく現行生産品を使いたかったのですが、6AU6A と 6FQ7 に関しては現行生産品はないので、東芝製の未使用の球を使いました。出力管は JJ の EL34 と Electro-Harmonix 6CA7EH を聴き比べた結果、後者の方を選びました。JJはスペア球としてキープしてあります。整流管の 5AR4 には SOVTEK を選びました。

その他に追加した部品も高音質のものを採用しました。1W以上の抵抗は酸化金属皮膜抵抗、それ以外の抵抗はタイヨームを使いました。電解コンデンサーはUniconにしました。ついでにカップリング・コンデンサーも、ASCのポリプロピレン・コンデンサーに交換しました。ASCにしたのは、外形寸法が小さいからです。小さい方が実装上の自由度が高いですし、振動にも強そうです(実証したわけではありませんが)。部品選びで迷った時は、小さい方を選ぶようにしています。

音質は僅かながら向上したと思います。残念ながら、大容量コンデンサーを追加するスペースがないので、デカップリング回路を左右別々にする改良はできませんでした。チャンネル・セパレーションは相変わらず低いままです(40dB@1kHz)。これが今後の課題です。



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