とのちのオーディオ・ルームの看板     サイトマップEnglish 
ホーム Gaudi NOBODY プロフィール 雑記帳 メールとリンク
 ホーム > Gaudi > Gaudiが教えてくれたこと  2012/12/21 作成
2015/01/21
更新

Gaudi が教えてくれたこと

37年間同じシステムを造り続けたことにより(2011年現在)、経験から学んだことが多々あります。それらはオーディオ雑誌に書いてあることとは少し違っていたり、書かれていなかったりします。Gaudiから学んだ教訓はわたしにとって貴重な財産になっています。
特筆したいのが以下の5項目です。

システム設計の重要性

Gaudiを設計したときに、わたしはまだほんの高校生でしたし、技術的には未熟でした。しかし、それがかえって幸いしたようです。個々の要素技術にこだわらず、システムトータルとしての性能を追求しました。もしその頃の私がいっぱしの技術者であったなら、回路設計にやたらとこだわったり、特定のメカにこだわったり、「木を見て森を見ない」、「策士、、策に溺れる」という事態になっていたかもしれません。
また、その頃の私は技術的には未熟でしたが、商品知識は豊富でした。内外のオーディオ・メーカー120社の全製品(スピーカー・ユニットなどのパーツを含む)のスペックを暗記していたぐらいです。よく秋葉原のオーディオ・ショップでその知識をひけらかせて店員をへこませたものです(生意気な若造でした)。その知識がGaudiのシステム構成や性能目標を決めるときに大いに役立ちました。

初期段階で明確に性能目標を決めたことによって、その後回り道をすることがあまりなく、無駄な出費も避けてこられたと思います。Gaudiの製作には長い年月がかかっていますが、それは回り道をしたからではなく、年間予算が平均7〜8万円しかないということと、本業が忙しくなるとほったらかしになるからです。(2013/08/01加筆){既存のコンポーネントの改良にかなり時間をかけているので、なかなか新作の製作に取り掛かれないという事情もあります。しかし、既存のコンポーネントの弱点を把握し、その改良のための対策を練ることは、新作を設計する上で重要なヒントとなります。

システム構成を決めた上で各機器の仕様を決めることは非常に重要です。システムに必要のない機能・性能は単なる無駄です。無駄があると、ほぼ間違いなく音質が低下します。
例えば、パワーアンプにアッテネーターがあれば、チャンデバにアッテネーターを備える必要はありません。(2015/01/21 訂正) {通常、パワーアンプのアッテネーターは初段の前にあります。アッテネーターを絞ると、伝送ラインに高抵抗が直列に挿入されることになり、信号が初段に入る前に歪んでしまいます。従って、アッテネーターは常に0dB(減衰なし)に設定しておく必要があります。チャンデバのアッテネーターを省略するには、パワーアンプのゲインをスピーカーの能率に合わせて決定する必要があります。自作アンプであれば、そのようにすることが可能です。それこそがシステム設計というものです。}
性能の無駄にも注意しなければいけません。性能は高ければ高いほどよいというものではありません。性能を上げようとして、回路を複雑化し、部品点数を増やせば、かえって音質的に不利になります。最も良い例は、パワーアンプの最大出力です。10Wで充分なのに余裕をとるつもりで100Wにしたとします。回路は複雑化し、部品点数は増し、大型部品が増え、シグナル・パスは長くなります。それではかえって音質が落ちる可能性が大です。
私はアンプの安定度も高すぎるのはかえってよくないと思います。高安定度のアンプは、音に躍動感・生命感が乏しいように感じます。メーカー製アンプや専門誌の製作記事で紹介される設計例は、どんな負荷がつながれてもよいように、安定度最優先の設計になっています。システム設計を先行すれば、接続する負荷が限定でき、不必要なマージンを取らなくてもよくなります。
その他オーディオ機器には様々なマージンがありますが、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、マージンの取り過ぎはかえって音質を落とすことになります。システム設計をしっかり行って、必要なマージンを把握することが重要です。

わたしは庶民クラスの人間であり、メーカー製ハイエンド・オーディオには縁がありませんが、試聴だけはときどきしています。行きつけのオーディオ・ショップで1時間ぐらい試聴室を借りきって試聴したり、オーディオ関連のイベントで試聴したりしています。そういうときによく感じるのは、「確かにGaudiよりも良い音かもしれない。でも値段の割には大きな差はないな」ということです。ときどき、「これだったらGaudiの方がましだ」と思うこともあります。(2013/08/01加筆){一度だけGaudiをやめて、総額約500万円のメーカー製システムに置き換えようとしたことがあります。ですから、まったくメーカー製ハイエンド・オーディオに縁がないというわけでもありません。
個々のパーツやコンポーネントがハイエンドでなくても、システム内に音質的にネックになるような部分がなければ、かなりの高音質を実現できます。逆にハイエンド・システムであっても、どこか一か所でも欠陥があれば、音質は大幅に低下します。
今までの経験から、下記の6点は特に気をつけなくてはならないと考えています。

グラウンド・ループ

システムの中にグラウンド・ループがあると、キンキンとした聴きづらい音になります。ハム・ノイズを発生することもあります。とても有害なのですが、油断するといつのまにか作ってしまいます。
下図は、デッキにつなぐ録音ケーブルと再生ケーブルを離れ離れにしてしまった例です。このようにするとどんな高級ケーブルを使っても無駄です。ブリスター・パックに入れられて家電量販店の店頭に吊るされている、録音・再生が組になったケーブルの方が良い音がします。

グラウンド・ループの例1

グラウンド・ループの有害性は割合最近まで知られていませんでした。Gaudi で使用中のカセット・デッキ Excelia XK-007がよい例です。1989年に製造されたこのデッキは、グラウンド・ループを作るようにできています。少なくとも80年代終わりまでは、プロのオーディオ技術者でもグラウンド・ループの有害性を認識していなかったわけです。
XK-007は CD DIRECT 端子を備えていて、これをCDプレーヤーにつなぐようになっていました。当時のCDプレーヤーの多くは出力端子が2系統あったので、片方はアンプのCD入力端子につなぎ、もう片方をデッキの CD DIRECT端子につないだのです。前面にあるCD DIRECTスイッチを入れると、REC端子ではなく、CD DIRECT端子から録音できました。このようにするとアンプを通さず直接CDプレーヤーから信号を受けとるので、途中での損失が少なく、CDの音をより高音質で録音できるといううたい文句でした。
当然のことながら、私もCD DIRECT機能を使ってみました。しかし、音質が上がるどころか逆に大幅に低下しました。カセットの音だけでなく、どのソースでも音が悪いのです。キンキンとした聴きづらい音でした。XK-007の電源を切った状態でも同じです。原因がなかなか理解できなかったのですが、とにかく原因はXK-007にあると考えて、配線をチェックしているうちにグラウンド・ループのせいだと気づきました。早速CD DIRECTのケーブルを抜いてみたところ、音質が元に戻りました。
グラウンド・ループの例2
このほかにもXK-007にはグラウンド・ループを作ってしまう原因があります。REC端子とPLAY端子が離れているのです。このため、小さいながらもグラウンド・ループができます。現在(2011年)ではXK-007を再生専用として使っており、RECケーブルはつないでいないので、この問題は回避されています。

Excelia XK-007の入出力端子


この経験から、オーディオ・システムにとってグラウンド・ループほど怖いものはないと考えるようになりました。以後、システム全体としても、アンプ内部の配線にもグラウンド・ループを作らないように注意しています。

上の例の他にもいくつか気をつけなければならない点を挙げます。

ケーブルを自作する際、L-ch.とR-ch.のワイヤーが離れ離れになっていると、グラウンド・ループが出来てしまいます。2本のワイヤーをゆるめにツイストさせるとよいでしょう。
グラウンド・ループの例3自作ケーブル

オーディオ機器同士を接続する際に、信号ケーブルの他にグラウンド線をつないではいけません。
グラウンド・ループの例4
各機器を大地アースに接続してはいけません。グラウンド・ループができる上、大地アースには様々なノイズ電流が流れていますので、ノイズ・レベルがグンと上がってしまいます。
グラウンド・ループの例5

共通インピーダンス

グラウンド・ループの次に怖いのが共通インピーダンスです。

複数の電流が共通に流れる経路にインピーダンスがあると、各電流の大きさによって電圧降下が発生します。電流が変化すると電圧降下も変化します。このことにより、複数の回路が互いに干渉しあってしまいます。
例を挙げて説明します。電源V[V]を2組の増幅回路A1、A2が共有していて、VからA1、A2の間には共通インピーダンスR[Ω]が存在するとします。A1に流れる電流が凾閏A]変化すると、A1、A2にかかる電圧は冓R[V]変化してしまいます。どのような増幅回路でも多少は電源電圧変動が出力に出てしまいます。つまり、A1の動作がA2にも影響するわけです。これをカップリング(結合)といいます。

共通インピーダンス


カップリングを防ぐための回路がデカップリング回路というもので、アンプ内部では通常各増幅段ごとにデカップリング回路を備えています。

デカップリング回路

システム・レベルでも共通インピーダンスによる影響は発生します。電源タップが良い例です。インピーダンスがゼロのケーブルやコンセントがあればいいのですが、残念ながらそのようなものは存在しません。電源タップが共通インピーダンスとなるので、オーディオ機器は電源変動の影響を最小にするように設計されているとはいえ、わずかながら機器間相互の干渉が起きます。
メーカー製のアンプの中には他機器用のACアウトレットを備えている物がありますが、音質を重視する場合、これは使えません。確かにアンプの電源スイッチで他機器の電源も一緒にON/OFFできるのは便利ですが、その代わり音質は劣化します。

かつてGaudi使用していたプリアンプPA-203にも6個のACアウトレットがありましたが、それを使っているうちに音質劣化に気がつきました。電流変動が大きいパワーアンプやCDプレーヤーをプリアンプのACアウトレットにつなぐと微小な信号を扱うプリアンプに影響を与えてしまいます。特にCDプレーヤーはモーターをサーボ制御しているので、電源電流が激しく変動します。CDプレーヤーはアンプから電源をとらないことはもちろん、電源タップの使用も避け、壁コンセントから直接電源をとるべきです。

目に見える所だけでなく見えない所、つまり壁内配線にも気を配るべきです。配電盤からオーディオ用コンセントへは最短距離で配線し、他のコンセントとは共有しないようにする必要があります。

Oyaide OCB-1現在(2015年)のGaudiの電源回りは下図のようになっています。マルチアンプ・システムなのでアンプの数が多く、どうしても電源タップを使う必要があります。電源タップにはオヤイデOCB-1を使用していますが、元のケーブル長が3mと長かったので、80cm に切って使用しています。配電盤にはオーディオ用のブレーカーを用意し、そこから一般家屋用としては最も太いVVF2.0というケーブルでオーディオ用コンセントに引っ張ってきています。壁コンセントには松下電工(現パナソニック)製ホスピタル・グレード・コンセントWN1318(3P、2個口)を2個使用しています。ホスピタル・グレード・コンセントは通常のコンセントに較べ接触抵抗が3分の1なので、確実に共通インピーダンスを減らすことができます。OCB-1もWN1318を使用しています。
電源接続図

ホスピタル・グレードを上回るコンセントとしてオーディオ・グレードなるものが市販されていますが、私はそのようなものを信じません。何か高価な材料――つまり希少価値のある材料――を使えば音が良くなる、などというのは迷信だと思います。特にコンタクトにニッケル以外の材料を使っているものは避けたほうが良いと思います。プラグ側がニッケル・メッキだからです。異なる金属を接触させると、それぞれの金属のイオン化傾向の違いにより、イオン化傾向の大きい(腐食しやすい)方の金属の腐食が加速されます。異種金属接触腐食という現象です。ホスピタル・グレードはニッケル・メッキなので、安心して使えます。
通常のコンセントはコンタクトがリン青銅でできています。リン青銅は腐食しやすい材質(イオン化傾向が大きい)ですし、ニッケル・メッキされたプラグと接触することによって腐食が加速されます。通常のコンセントもオーディオ用には不向きだと思います。

オーディオ用電源として、200Vも用意してあります。コンセントはやはり松下電工(現パナソニック)製のホスピタル・グレード(WN11122)を使用しています。現在このコンセントは活用できていませんが、将来的にはこれに200V:100Vの降圧トランスを接続し、パワーアンプの電源とするつもりです。
電圧が倍になると、同じ消費電力でも電流は半分になります。アンプの電流変動が200Vラインでは1/2になるわけです。さらに、200Vラインでの電圧変動は降圧トランス2次側(100Vライン)では1/2になりますので、トータルすると、壁内配線のインピーダンスが1/4になったのと同じ効果があります。
降圧トランスにはノイズ・フィルターの効果もあります。高周波ノイズをカットできます。また、大地アースからアンプを切り離せるので、電源ケーブルに余計な電流が流れず、ノイズの点で有利です。

200Vラインを使うメリットは非常に大きいので、予算が取れ次第、降圧トランスを購入しようと思っています。
(2013/08/01加筆){2013年6月より、ノグチトランス製の降圧トランス2PMC-540EZをミッドレンジ用パワーアンプの電源に使用しています。このトランスの容量は540Wで、出力コンセントは2個あります。効果のほどは今のところはっきりわかりません。ゆくゆくはもう一台トランスを買い増し、すべてのパワーアンプの電源を200Vコンセントからとるようにするつもりです。
(2015/01/21訂正) {
ミッドレンジ用パワーアンプのFlying Mole DAD-M100Proが、その電源回路がトランスレスのためか、アースから浮かすと音質が劣化することが判明しました。現在はOCB-1から電源を取っています。将来的には、2PMC-540EZをNOBODYアンプ用に使用する予定です。なお、降圧トランスは漏れ磁束や唸り音を発生するので、設置場所が限定されます。また、200Vコンセントが1個しかないため、今後降圧トランスを買い増す予定はありません。}

接点

接点、つまりスイッチ、リレー、可変抵抗器、コネクター(プラグ、ジャック、ターミナル)は、しばしばトラブルのもとになります。接触不良を起こしたり、そこまでいかなくてもインピーダンスをもったりします。接点を流れる電流が大きいほど影響が大きくなります。
オーディオ・システム中で最も大きな電流が流れるのはパワーアンプからスピーカーにかけてです。例えば、アンプの出力が100Wでスピーカーのインピーダンスが8Ωだとすると、約3.5Aもの電流がアンプの増幅素子からスピーカーケーブル、そしてスピーカー・ユニットのボイスコイルへと流れます。この間にある接点は特に上質なものでなければなりません。さらに、ケーブルを端子にはんだ付けするなどして、接点を減らすことができれば、そのほうがより高い音質を得られます。

もし接点が上質ではない場合、つまりインピーダンスをもっている場合、結果としてどのようになるでしょうか。私の感覚では、音の輪郭がぼけ、耳当たりはよいけれど何かもやもやとはっきりしない音に聞こえます。スピーチや会話が聞き取りにくい音です。しかし、聴きようによっては、管球アンプ的なふくよかで柔らかな音にも聞こえます。

私はこのような例を実際に二度体験しています。
最初の体験はLUX L-505Vです。ある日友人が、「長年使ってきたアンプだけど、壊れてしまったからもういらない」といって、私にL-504をくれました。調べてみると、出力段のバイアスがずれていただけだったので、調整の上サブシステムに使うことにしました。ちなみに、スピーカーはビクターSX-3IIIでした。L-505Vはソフトな音調、ウォームな音色で、さすがLUX、半導体アンプでも管球アンプのような音作りをしている、と大いに感心したものでした。当時私はレーザー・ディスクを導入していて、サブシステムで音声を再生していました。映画ソフトを再生すると、セリフが聞き取りにくいことに気づきました。日本語でも英語でも所々何を言っているのかわからない部分がありました。
数年後、突然片側のスピーカーから音が出なくなりました。調べたところ、スピーカー・スイッチが導通しなくなっていることがわかりました。このスイッチはテープ・モニタースイッチなどの信号切り替え用のスイッチと同じ部品が使われていました。スイッチにはそれぞれ最適の電流があります。小電流には小電流に適した、大電流には大電流に適した接点の構造や材質があるのです。単に負荷電流が最大定格に収まっていればよいというのではありません。当然信号切り替え用スイッチとスピーカー・スイッチとでは部品の選定基準が異なります。しかし、LUXとしてはデザインの統一を図るため、同じ部品を使ったのだと思います。「やれやれ天下のLUXも基本的な設計ミスをするな」と思いつつ、どうせスピーカー・スイッチなぞ使わないので、スイッチをパスして出力を直接スピーカー端子へつないでしまいました。
改造後、音を出してみてびっくり! まるで別のアンプでした。半導体アンプらしいクリアでメリハリのある音になっていました。映画のセリフもばっちり聞きとれるようになりました。真空管的サウンドは、貧弱なスイッチ一つがもたらした結果だったのです。

DAD-M100Pro二度目の体験は、現在もGaudiで使用しているフライングモールDAD-M100Proです。このアンプはデジタルアンプなのですが、管球アンプ的な耳当たりのよい音がします。L-504での経験がありますので、もしかしたら、同じようなテクニック(?)が使われているのではないかと思い、カバーを外し、内部を見てみました。一見しただけではスピーカー保護用のリレーが見当たりません。よく見ると、何とマイクロリレーが使われていました。松下電器(現パナソニック)製ALD112という品種で、最大許容電流は3Aです。3Aという数値は、それだけの電流を流しても接点が壊れないという意味で、3Aの電流を歪みなく伝えられるという意味ではありません。実際に流すことのできる電流はずっと小さい値です。これは明らかにスピーカー保護用としては容量不足です。少なくとも10A、できれば20Aクラスのリレーを使ってほしいところです。この小さなリレーのおかげで、マイルドな音質が実現していると、私は確信しています。ただ、L-504と違って、DAD-M100はセリフが聞き取りにくいということはありません。ほどよくマイルドな音になっている感じです。
リレーを通過した信号電流はメイン基板のコネクターから基板間接続ワイヤーに流れ、入出力端子用サブ基板のコネクターに流れます。さらに出力端子につながり、そこでようやくスピーカーケーブルに流れます。つまり、増幅素子からスピーカー・ケーブルまで、リレー、コネクター、コネクター、出力端子と4つの接点を通過するわけです。コネクター類はリレーに比べて電流容量が大きいので、リレーほど悪影響を及ぼしていないとは思いますが、やはり音の透明度を落とす要因になっていると推察します。

W. Marshall Leach, Jr氏は、著書「Introduction to Electroacoustics And Audio Amplifier Design」の中で、管球アンプ的な音を簡単に実現する方法として、半導体アンプの出力に2Ωの抵抗を直列につなげればよいと述べています。確かにこの方法で、刺激感のない柔らかな真空管的な音を作り出すことができます。

Gaudiではパワーアンプの出力にはんだ付け可能な端子台を用いたり、スピーカー・ユニットの端子に直接ケーブルをはんだ付けしたりして、接点の数を極力減らしています。このことにより音がよりクリアになり、スピーチや会話を再生したときに、言葉が聞き取りやすくなります。また、音の瞬発力が増し、肌で感じる風圧のような低音が再現できるようになり、シンバルの音が重い金属板を叩いて出る音だということが実感できるようになります。

  スピーカー・ケーブルの接続(スピーカー側) スピーカー・ケーブルの接続
(ウーファー・アンプ側)
スピーカー・ケーブルの接続
(ツィーター・アンプ側)
 
 スピーカー・ケーブルの接続(スピーカー側) MA-201 output  MA-208 output

ケーブルをはんだ付けしてしまうと、ケーブル交換の際は必ずはんだごてが必要になりますし、スピーカー・ユニットをはずさなければいけないので、かなり面倒です。しかし、ケーブルはしょっちゅう交換するものではないですし、この程度の手間はアンプを自作するぐらいのバイタリティのある人にとっては何でもないはずです。どんな高価な端子を使うよりも音質が上がるのですから、手間を惜しむべきではありません。

なおGaudiでは、チャンデバCD-211につながるケーブルをすべてチャンデバ内部の回路に直接半田付けして接点を減らしています。これも若干の効果が認められますが、ライン・ケーブルの無接点化はスピーカー・ケーブル程の効果はないようです。

振動

「振動を制するものはオーディオを制す」というぐらい、振動対策は音質を左右します。しかし、これほど難しい課題は他にないといっていいぐらいです。単に制振グッズを買ってきて使えばよいとか、ラックや筺体を補強すればよいというほど単純ではありません。

私はかつて振動(音)の伝わり方について、2つ大きな誤解をしていました。

SS-309 Base石のように硬くて重い物体は、そのイナーシャにより外力を加えてもその位置を保とうとします。スピーカーの下に大理石や御影石などを置くのは、スピーカーにメカニカル・アースを与えるという目的があります。Gaudiでもスピーカーの下に御影石を置いています。私が誤解していたのは、その御影石が、同時にインシュレーターとしての役目も果たすと思い込んでいたことです。
期待に反して、インシュレーターとしては機能しませんでした。それまで使用していた煉瓦の方がまだ振動の伝播は少なかったように思います。ただ、メカニカル・アースとしての効果は充分にあり、音質が大幅に向上したので、現在でも御影石を使用しています。

Gaudiでの経験ではないのですが、もうひとつこれに類する経験をしています。
私は、仕事で超音波の実験をしたことがあります。実験装置に振動が伝わってしまうと、測定データにノイズが混じってしまうので、どうにかして振動をシャットアウトする必要がありました。その頃は、硬くて重い物体が振動を遮断すると誤解していたので、厚さ約20cm、重さ50kg以上のアルミ板を台の上に置き、その上に実験装置を置きました。実験を始めてすぐに、この対策は何の役にも立たないことがわかりました。実験室内を歩き回る人の足音が検出されてしまうし、何と敷地外の道路を大型車が走ると、その振動を検知してしまうのです。

もうひとつ苦い経験があります。プリアンプPA-210を設計するときに、私はまだ頑丈で重い筺体が振動に強いと誤解していたので、ケースを非常に頑丈のものにしてしまいました。アルミ角材でフレームを組み、各面に2〜3枚のアルミ板を重ねてねじ止めするという方式で、強固なケースを作り上げました。しかし、初めてシステムにつないで音を出したときに愕然としました。セレクター・スイッチを回すと、そのクリック音がスピーカーから出てくるのです。それは電気的ノイズではなく、ロータリー・スイッチが発する振動をファイナル段の真空管がマイクロフォニック・ノイズとして拾ってしまうからでした。何の振動対策もしていないPA-203ではそのようなことはありませんでした。

以上の経験から、硬くて重い物体は、見た目の頼もしさとは裏腹に、振動を防ぐ効果はないということや、頑丈につくった筺体はかえって振動に弱いということがわかりました。

確かに、石やコンクリートの壁は音を遮ります。しかし、これは石やコンクリートが音を伝えにくいということではなく、空気との音響インピーダンスの差が大きいため、空気と壁の境界面で音が反射するために、壁の中に伝わる音量が低いということなのです。音響インピーダンス差が大きいほど反射量は増えます。
気体、液体、固体のいずれも媒質(音波を伝える物体・物質)となりますが、その順に音響インピーダンスが低くなります。固体中は音速も早く、長い距離をあまり減衰することなく音波が伝播します。つまり、石やコンクリート自体は音波を非常によく伝えるのです。固体同士が接している場合は反射も少なく、音波が非常に良く伝播します。固体伝播を食い止めるのは容易なことではありません。スピーカーの下に何を置いても、床に振動が伝わり、その振動がアンプやプレーヤー等に伝わってしまうという事実は、固体伝播の厄介さを物語っています。

気体から固体への伝播
反射量が多く、固体への伝播は少ない
固体から固体への伝播
反射量が少なく、多くが伝播する
気体から個体への伝播 固体から個体への伝播 


振動の伝播を防ぐには、伝播する経路に直列に振動を吸収するような柔らかい材料を設置するしかないと思います。Gaudiでは、吸振ゴムでできたインシュレーターを使っています。近所のホームセンターで見つけて買ってきたものです。オーディオ・ショップで売られている防振グッズは、値段はすごく高いのですが、効果はいまひとつなので、私は使いません。

Gaudi で使用しているインシュレーター
Vibration absorbing rubber  メイン・ラックのインシュレーター  PS-104のインシュレーター 
OA機器用インシュレーター
.オーディオ用としても高性能なので、
Gaudiの多くの箇所で使用している。
メイン・ラックのインシュレーター
.MDFと吸振ゴムの組み合わせはなかなか良い。
アナログ・プレーヤーPS-104のインシュレーター
PS-104の足(DENON AF-10)自体なかなか高性能の
インシュレーターである。吸振ゴムはハネナイト・ゴムで
ある。これはかなり効いている。
 SACDプレーヤーのインシュレーター  PA-210のインシュレーター スピーカー・ケーブルの空中配線 
SACDプレーヤーのインシュレーター
ゴムはハネナイトであり、良く振動を吸収する。
タングステン・シートはFostexの製品。
高価ではあるが、効果はあまりない。
プリアンプ PA-210 のインシュレーター
ブチルゴム、ハネナイト・ゴム、5mm厚フェルトから
なるインシュレーター。効果は抜群。

スピーカー・ケーブルの防振対策
スピーカー・ケーブルは、床やラック、スピーカーの
エンクロージャーに接触しないように壁から吊るした
ナイロン・ワイヤーで宙づりにしている。.
 ケーブルのインシュレーター 棚板の防振対策  ターンテーブル・シート 
ケーブルのインシュレーター
ケーブルがどうしても床に接触してしまう場合
には、吸振ゴムのシートを床に敷く。
棚板の防振対策
ブチルゴム・テープを棚板の裏側に貼ってい
るが、まったく効果はない。
 
ターンテーブル・シート
ゲルが充填されているため、振動を吸収する。 


高周波ノイズ

高周波はどうせ人間の耳には聞こえないから、放っておいても大丈夫、というのは誤った認識です。アンプ内に侵入した高周波ノイズは低周波に変調をかけ、大きく歪ませてしまいます。一番極端な例は、高周波を増幅することによって、増幅素子が飽和してしまう場合です。
高周波ノイズの侵入経路としては、(1)入力、(2)出力、(3)電源ラインが考えられます。それぞれ、下記のような対策を施す必要があります。
(1)の場合、可聴帯域のみを通すローパス・フィルターをアンプの入力端子付近に入れます。このフィルターはパッシブ型でなければいけません。
Input Low Pass Filter of CD-211
(2)の場合、出力から入った高周波ノイズは、NFBループを通って前段に入り、増幅されます。出力端子から入力するというのはイメージしにくいのですが、実際に起こりえます。パワーアンプでは、出力段から初段までループしているので、特に影響が大きくなります。ただ、真空管アンプの場合、高周波帯での増幅度が低いため、それほど影響を受けないようです。さらに、MA-208のように出力トランスの3次巻線からフィードバックしているアンプでは、出力から直接フィードバックするアンプと較べて、出力から混入する高周波ノイズは少ないと思います。
Output Transformer of MA-208

(3)の場合、電源回路はインピーダンスが低く、ノイズが通過しにくいように思えますが、そうではありません。高周波領域では、インピーダンスは決して低くないのです。例えば、平滑回路に用いる大容量電解コンデンサーは、高周波領域ではインダクティブになります。つまり、コンデンサーとしてではなく、インダクターとして動作します。大容量のコンデンサーには、必ずそれと並列に小容量のコンデンサーを入れて、高周波でのインピーダンスを下げるようにします。
トランスは高周波を伝達しにくい部品と思われがちですが、1次・2次巻線間の浮遊容量により、高周波が伝わります。電源トランスを選ぶ際には、かならず1次・2次巻線間にシールドが入っているのものを選ぶようにします。シールドをグラウンドにつないでおけば、1次・2次間の容量結合を防ぐことができます。

Power Transformer with Shield
ACラインはノイズだらけです。ためしにゲルマラジオをコンセントにつなげてみればよくわかります。電灯線でキャッチした電波の電力だけでクリスタル・イヤホンを鳴らすことができ、AM放送を聞けます。私は電源ノイズを少しでも減らすために、NOBODYブランドのアンプすべてにライン・ノイズ・フィルターを使用しています。ライン・ノイズ・フィルターの阻止帯域はかなり高めなので、オーディオ・アンプに有効かどうかははっきりしませんが、それでもフィルターなしにACラインに接続するのは精神衛生上良くないので、なるべく阻止帯域の広そうなフィルターを選んで使用しています。

高周波ノイズ対策は、アンプでの対策だけではなく、そもそも発生源を減らすことも重要です。音楽鑑賞の間、エアコン、パソコン、携帯電話、蛍光灯等の電源を切っておくと、少しでもノイズを減らせます。

電位差

各機器のグラウンドの電位が異なっていると、ケーブルで接続したときに、電位差に応じてかなり大きな電流が流れます。例えば、プリアンプとチャンデバをラインケーブルで接続したとします。両者のグラウンドに電位差がある場合、ケーブルの網線(グラウンド側)にこの電位差に応じた電流が流れます。網線のインピーダンスがゼロであれば電位差はゼロになりますが、実際にわずかながらインピーダンスがあるので、電流に比例したノイズ電圧が発生します。
この問題を回避するために、Gaudiではグラウンドの電位をACラインのホット・コールドの中点に定めています。ただし、CDプレーヤー等のメーカー製機器ではどうなっているのかわからないので、完璧な対策ではありません。

グラウンド電位

最近気がついたのですが、より根本的な解決策は、電位を定めないことだと思います。つまり、大地アースから浮かすということです。普通にACコンセントに差し込めば、コールド側は大地アースに接続されているので、電位が定まってしまいますが、1:1のトランスをコンセントと機器の間に入れてアースから絶縁すれば、この問題は解決できると思います。近い将来、この対策を実施したいと考えています。

このページの先頭に戻る

アナログ・レコードの魅力

初期のGaudiではメインのソースはアナログ盤でしたが、今はどうかというと、やはりアナログ盤です。もちろんCDやSACDもコレクションしていますが、アナログ盤の生命感あふれる「生きた音」は、CDやSACDではなかなか味わえません。
私だけでなく、アナログ盤に魅力を感じている人は多いと思います。中にはノイズだらけの音でも気にならないという人もいますし、理屈抜きにとにかくアナログ盤は音が良いと信じている人もいます。しかし、アナログ盤の音の良さには、ちゃんとした科学的根拠があるように思えます。
CDとの比較論でアナログ盤の長所・短所を検討してみましょう。

アナログ盤の長所

アナログ盤の長所は色々ありますが、私は次の4点を挙げたいと思います。


アナログ盤のDレンジ

一般的にはアナログ盤のDレンジは狭い(60dB〜70dB)と考えられていますが、私の見解は少々違います。
Dレンジの定義は最弱音と最強音の比をデシベルで表わしたものです。最弱音はカートリッジが発電可能な最も小さな振幅で決まります。従って、カートリッジの性能が上がれば、最弱音はより低いレベルになります。(2015/01/21訂正) {この定義はWikipedia日本版からの引用ですが、正しい定義は、信号の最大振幅と残留ノイズの電圧比をデシベルで表わした数値です。アナログ盤のDレンジの測定方法を調査してみましたが、いまだによい文献が見つかっていません。どなたかご存知の方がいらっしゃったら、ご教示いただければ幸いです。}
最強音は音溝のピッチで決まります。LPレコードの音溝のピッチは0.05mmというのが標準と言われていますが、実際にはもっとピッチが大きいレコードもあります。45回転LPや30cmシングルがその例です。私の手持ちで最もピッチが大きいのは、0.35mm もあります(河島英五、酒と泪と男と女、WARNER-PIONEER L-3503E、30cmシングル)。45回転LPも0.15mmぐらいあるものがあります(Sonny Clark, Cool Struttin', Blue Note/Music Matters BST81588)。最強音のレベルは一般のLPと最近の高音質レコード(以下HQ盤)とは明らかに違います。
以上のことから、HQ盤に関しては、実は80〜90dBぐらいのDレンジがあるのではないかと、私は考えています。
(2015/01/21追記) {上記私見はあまり理論的あるいは定量的な根拠はありませんが、私は今でもアナログ盤のきめ細やかで奥行き感のある音は、実質的なDレンジがかなり広いためではないかと推察しています。特にスクラッチ・ノイズに埋もれた信号が実は人間には音楽情報として検知できるのではないかという仮説を信じています。}

一方CDのDレンジはどのぐらいでしょうか。一般的には96dBと言われています。この数値は1ビット当たり6dBで単純計算した結果です。つまり 6dBx16=96dB というわけです。しかし、この場合は最弱音は0ビットということになります。つまり、無音ということです。これではDレンジの定義から外れてしまいます。
最弱音の定義は1ビットの分解能の音とするとどうでしょうか。その場合はDレンジは 6dBx(16-1)=90dB となります。私はこれでもまだ納得できません。
私見では、人間の感覚で「音」と感じる信号を再現するには4ビットぐらいは必要なのではないかと思います。そう考えると、Dレンジは 6dBx(16-4)=72dB となります。CDのDレンジはアナログ盤並みかそれ以下ということになりますが、私はこの数値は聴感上のDレンジに一致するような気がします。
(2015/01/21追記) {デジタル機器のDレンジの測定方法は、業界団体であるJEITA(Japan Electronics and Information Technology Industries Association; 電子情報技術産業協会)のCP-2150という文書で規定されています。その方法で測定すると、CDプレーヤーは90dB以上のDレンジとなるそうです。さらに、ディザリングという手法を用いると120dBぐらいまで拡大可能だそうです。ちなみにGaudiで使用しているSACDプレーヤーSONY SCD-555ESのCDに対するDレンジは100dBであり、SACDに対する105dBとほとんどそん色ない値となっています。しかし、私はこれらの数値に何か胡散臭いものを感じます。信号処理技術により、見かけ上のノイズレベルを下げているだけで、音楽情報の豊富さを表わしているとは思えないからです。}

アナログ盤をデジタル録音してみると、そのDレンジの広さを実感します。分解能をCDと同じ16ビットにすると、入りきらないのです。先に触れたSonny ClarkのCool Struttin' が良い例です。このアルバムはピークレベルが非常に高く、録音レベルをかなり低くしないとサチッてしまいます。このアルバムを録音した Rudy Van Gelder氏はリミッターの使用を毛嫌いしていたそうですが、なるほどなあ、と思います。このアルバムを録音するには、24ビットの分解能が必要です。

私はHQ盤のDレンジはCDより広いと考えます。HQ盤の緻密で滑らかな音は、Dレンジの広さに寄るものだと思います。また、通常のLPであっても、物によってはCDを上回っていると思います。

アナログ盤のfレンジ

アナログ盤のfレンジの広さはオーディオファイルなら誰しもが認めるところです。中には20kHz以上の音はどうせ聞こえないのだから、出しても無駄だという人がいますが、それは違うと思います。
確かに、20kHz以上の音は基音としては聞こえませんが、倍音として音色を左右します。一種の閾下知覚です。fレンジが広いと、音の品位が上がり、聴いていて天に昇るような幸福感を感じます。

人間が心地よいと感じる音には、超高音を含んでいるものが多くあります。楽器の音だけでなく、小川のせせらぎや森の中で木の葉がざわつく音など、人が癒しを感じる音の多くが超高音を含んでいます。
人間も訓練次第で超高音を発声できるようになります。モンゴルの伝統的歌唱法のホーミーや、東欧に伝わる女声合唱ブルガリアン・ポリフォニーなどが良い例です。日本の歌手では、松任谷由美が超高音を含んだ声の持ち主だということです。
私は生で聴いたことはないのですが、聴いた人の話によると、まことに心地よい声だそうです。

超高音が音の印象を変えるという事実は、科学的に実証されています。研究者の実験によると、心地よい音をそのまま被験者に聴かせた場合と、20kHz以上をフィルターでカットして聴かせた場合とでは、アルファ波の出方が違うそうです。超高音を含むほうがアルファ波が多くなります。つまり、被験者がより心地よいと感じているのです。

私は、オーディオ・ソースに必要なfレンジは20Hz〜40kHzだと考えています。40kHz以上は、マイクの性能などを考慮すると、ほとんど雑音成分なので、むしろ含まないほうが良いと思います。
アナログ盤は文句なくこの条件をクリアしています。アナログ盤の音の良さの一因だと思います。
fレンジが20kHzしかないCDは、私はHi-Fiソースだと受け止めていません。実際購入することはほとんどなく、もっぱらレンタルしています。

アナログ盤の寿命

アナログ盤の最大の魅力は、その寿命の長さだと思います。半永久的と言っていいと思います。少なくとも保存している間に音溝が消えてしまうということはなく、おそらく100年後、200年後にも再生可能だと思います。
かけるたびに音溝が摩耗し、音質が劣化すると言われていますが、ライン・コンタクト針を使用していれば、それほど劣化するものではありません。
多少高価なレコードでも、一度入手すれば一生の宝物として所有できます。
私の手持ちのLPで最も古いものは1967年製ですが(Ted Sommer, Percussive Mariachi, Solid State SS18012)、今でもみずみずしいサウンドをきかせてくれます。1970年、中学生の頃に買った初めてのジャズLP(Oscar Peterson Trio/Sonny Stitt, Sonny Stitt Sits in with The Oscar Peterson Trio, Verve MV2022)は生涯の愛聴盤であり、今まで何百回再生したか数えきれませんが、今でも十分鑑賞に堪える音質を維持しています。

それに対してCD等の光学ディスクの寿命は20〜30年であり、一生の宝物というわけにはいきません。手持ちのCDでも、80年代のものの中にはすでに極端に音質が悪くなったり、再生不能になってしまったものがあります。駄目にならないうちにPCでリッピングするようにしています。

アナログ盤プラスαの魅力

アナログ・レコードのプラスαの魅力は、そのヴィジュアルです。ジャケットは美術品といってもよいぐらいで、部屋に飾っておくといいインテリアとなります。ただし、光をあてると色があせるので、長時間の放置はいけません。
ライナー・ノーツや歌詞も字が大きいので読みやすく、じっくり読む気になります。

アナログ盤のタイトル数

現在のアナログ・レコードのタイトル数はどのぐらいあるのでしょうか。無限大と言ってもよいのではないでしょうか。
今でも新譜が発売されていますし、中古レコードの市場もあります。中古品はレコード屋さんだけでなく、Hard Offのようなリサイクル・ショップでも手に入ります。CDでは手に入らないソフトもかなりあります。
ソフトの豊富さもアナログ盤の魅力の一つです。

アナログ盤の短所

アナログ・レコードには短所がたくさんあります。それらがどうしてアナログ盤の魅力をスポイルしないのか。それを考察してみます。まずは主な短所を挙げます。

アナログ盤のノイズ

アナログ盤は様々なノイズを発生します。代表的なのはスクラッチ・ノイズです。針先が音溝を引っ掻くときに必ず出る音で、ゼロにはできません。このノイズはランダム波なので、いわゆるホワイト・ノイズになります。それほど気にさわらないノイズです。ピックアップのトレース能力が高いほどレベルが下がります。
私はスクラッチ・ノイズはほとんど気になりません。曲間では少し気になりますが、演奏が始まるとともにさーっと波が引くように楽音の裏に隠れる感じがします。また、そう聞こえるのが盤質の良いレコードだと思います。

最も気になるのがクラックル・ノイズです。ぱちぱちという音です。アナログ盤びいきの私でも、このノイズは気になります。原因はキズである場合もありますが、一番多いのがカビに因るものです。
レコードを扱っている最中にしゃべったりしてはいけません。唾液が飛んで盤面につき、それがカビの栄養源になってしまうからです。手で盤面を触るのも駄目です。手あかがつくと、やはりカビの栄養源になってしまいます。

中には新品のレコードなのにクラックル・ノイズやがさごそという不規則なノイズを出すものがあります。おそらく剥離剤が残留しているためと思われますが、レコードを洗浄すれば軽減する場合があります。そのやり方については、いずれ雑記帳の中に書くつもりです。

ノイズはアナログ盤の宿命ですが、盤質が良くて、ピックアップの調整がきちんとできていれば、演奏を台無しにする程ではありません。充分許容範囲内だと思います。

アナログ盤と振動

アナログ盤の最大の短所は、振動に弱いことです。スピーカーからの振動がプレーヤーに伝わり、音を歪ませ、最悪はハウリングを起こします。
プレーヤーやラックの防振対策を徹底しなければなりません。しかし、前述のように振動対策は一筋縄ではいきません。色々な対策を試しながら、少しずつ改善していくしかありません。

実は、振動に弱いということでは、CDも同じです。CDプレーヤーはレーザー光をCDのピットにあてて、その反射光を読み取りますが、それは揺れ動く小さな的を射抜くようなものです。ピックアップに強力なサーボをかけて追随させています。振動のない環境では、何とか的に当てますが、加わる振動が増すにつれて、頻繁に的を外すようになります。どんな射撃の名手でも、体を揺さぶられたら、的をはずして当然です。
エラーが頻繁に発生するCDの音は、細部が不明瞭で、奥行き感がありません。アナログ盤のようにハウリングはしないものの、CDプレーヤーにもしっかりとした振動対策が必要です。

結局より振動に弱いのはどちらでしょうか。私はCDだと思います。念入りに振動対策をすれば、むしろアナログ盤のほうが、振動による音質劣化が少ないと思います。

アナログ盤のチャンネル・セパレーション

カートリッジのチャンネル・セパレーションは最大でも30dBなので、CDに比べれば明らかに劣ります。しかし、ステレオ感や定位は充分に得られるので、アナログ盤の魅力をスポイルするほどの欠点ではないと思います。

アナログ盤のワウ・フラッター

ワウ・フラッターは、充分重いターンテーブルを使い、サーボを使わなければ、人間には検知できないレベルに収まりますので、大きな問題とはなりません。
偏心、ソリ等ディスク自体の問題もありますが、ほとんどのレコードでは充分な精度が保たれていると思います。

アナログ盤とメンテナンス

痛んだり汚れたりしたレコードを手入れするのはたいへん面倒ですが、通常の取り扱いでは傷ついたり汚れたりすることはないので、普段のメンテナンスはそれほど手間はかかりません。
私の場合は、レコードをかける前とかけた後で電動自走式クリーナーを使っているだけです。レコード・スプレー等のケミカル用品は一切使いません。
若い頃、色々なケミカル用品を試し、そのたびにレコードにダメージを与えてしまいました。むしろ何もしないほうが、レコードは長持ちします。
音溝に汚れがたまったり、カビが生えてしまった場合、あるいは中古レコードを買った場合、私は私なりの方法でクリーニングしています。手順を説明すると長くなるので、後日雑記帳に記すことにしますが、とにかく市販のレコード用ケミカル用品は使いません。浄水とアルコールを使って洗浄します。この作業は手間はかかるのですが、一度やっておくと10〜15年くらいはクリーンな状態が保たれます。

私はアナログ盤のメンテナンスはそれほど面倒だとは思っていません。むしろジャンク・レコードでもクリーニングすれば、十分鑑賞に堪える音質になるので、手入れのし甲斐があると思っています。

CDはメンテナンス・フリーで取り扱いが簡単ということになっていますが、あまり手軽に扱うとダメージを受けます。例えば、CDを裸のままテーブル上に放置したりすると、記録面に傷をつけてしまいがちです。目に見えない細かなすり傷でも音質に悪影響を及ぼします。CDの取り扱いには意外に注意が必要です。

アナログ盤の収録時間

LPレコードの片面に収録できる時間は20〜30分程で、交響曲のような大曲は全楽章を片面に収めることができません。途中でレコードをひっくり返したり、取り替えたりする必要があります。これは欠点と言えば欠点なのですが、私にはこの20分間隔のインターバルがむしろ良い休憩となり、音楽に深く集中できるような気がします。

総合評価

総合的に判断して、アナログ盤は最も魅力的な音楽メディアだと思います。
CDでは音質的に今一つですし、SACDは寿命が短い、振動に弱い、といった光学ディスク特有の欠点をCD同様に備えています。また、SACDはタイトル数が極端に少ないという問題もあります。

アナログ盤にとって替わるとしたら、ハイレゾ音楽ファイルのダウンロードしかないと思います。しかし、現状では日本の音楽産業がCDにこだわり続け、ダウンロードに極めて消極的です。国内のダウンロード・サイトは無名アーティストの作品ばかりを高価で売っていますし、海外の有力ダウンロード・サイトも日本からのダウンロードを拒否したりしています。(2015/01/21追記) {米国のHDtracksや英国のLinn Recordsなど、日本に居住している者でもIDを取得できるサイトが増えました。しかし、一部タイトルは相変わらずダウンロードを拒否されます。}
私の知る限り、再生システム側も手薄だと思います。まだまだオーディオ・メーカーの多くがハイレゾ音楽ファイルの再生に本気で取り組んでいません。(2015/01/21追記) {最近ソニーがハイレゾ対応製品を続々と発売しています。こういった動きは大歓迎です。ハード・ソフトともにハイレゾ製品が増えることを望みます。}

やはりアナログ盤が一番だと思います。
(2015/01/21追記) {次期システムGaudi IIでは音楽ファイルを主たるソースにするかもしれません。}

このページの先頭に戻る

管球アンプのメリット

ここではパワーアンプに限定して、真空管のメリットについて述べます。
(2015/01/21追記) {以下、管球アンプのメリットについて色々と述べていますが、ここ数年の間に管球アンプの様々なデメリットに気づく一方、やはり本当のHi-Fiアンプは半導体でなければ実現できないと考えるようになりました。特にICを用いたアンプは、管球アンプ以上に簡単に製作でき、コストも安いという特長があります。現在、ICアンプでハイエンドの音質を実現できるかどうかを模索中です。}

私の考える管球アンプの最大のメリットは、コスト・パフォーマンスです。低価格の製品や安価な部品で製作したアンプでも、ハイエンド・アンプ並みかそれ以上の音質を得られます。
お勧めの真空管は、MA-208で使用している6BQ5です。MTの五極管であり、見た目は頼りなさそうですが、プッシュプルで最大十数Wのパワーを出せます。使用する回路や他の部品の性能にもよりますが、概して解像度が高く、かつダイナミックで生命感あふれる音がします。私は部品選びで迷った時は、同一機能・性能であれば小さい方を選ぶようにしています。これは真空管にも当てはまると思います。

逆に高価な管球アンプはお勧めではありません。癒しの音というか、昔懐かしい音を追求したものが多いからです。照明でいえばほの暗い白熱電球のように、細部まであからさまにせず、落ち着きのある雰囲気を醸し出すようなアンプです。この種のアンプの代表格は300Bのような直熱三極管を使ったアンプです。
300Bアンプは管球アンプの中でも一番人気なので、オーディオ・ショップや真空管オーディオフェアのようなイベントでよく見かけます。試聴したことも数えきれないぐらいあります。しかし、あまり優れたアンプだと感じたことがありません。私にはその価値が良くわかりません。そもそもパワーアンプで癒しの音をつくるという考え方そのものが少し違うと感じます。パワーアンプはあくまでHi-Fiであるべきだと思います。

癒しの音、柔らかい音を求めるオーディオ・ファイルが多いのは確かですが、そのほとんどは私より年上の年配者です。年配の方々は、より刺激の少ない音を求める傾向があります。私の父も例外ではなく、よくFMよりもAMの方が音が良いと言っていました。GaudiでFMを聴かせてあげると、最初は、おっ、クリアでいい音だな、と褒めてくれるのですが、そのうちに、賑やか過ぎる、低音が出過ぎ、右から音が出たり、左から出たりで落ち着いて聴いていられない等々不満が続出しました。AMを聴かせると、うん、これはいい音だと言いつつ聴き入っていました。
昔エルヴィス・プレスリーが台頭していた頃、当時の年配者たちは、彼の音楽はやかましくて聞いていられないと酷評したそうです。あの「ラブ・ミー・テンダー」でさえ、やかましいと言われたのです。いつの時代でも、年配者は刺激の少ない音を求めているようです。

癒しの音は若者にはアピールしないと思います。あまりにも刺激がなさすぎるからです。現在市販されている管球アンプの多くは年配者向けに音作りがされているので、若い人が聴いたら、なんか変な音、というようにしか聞こえないと思います。私は、若い人にはぜひMT管Hi-Fiアンプの音を聴いてみて欲しいと思っています。管球アンプも必ずしも癒しの音だけではない、ということを知ってほしいです。

ここでいくつか私自身の経験を紹介します。

2011年9月にタムラ製作所の試聴スタジオの一般公開に招待されました。高名な方(すみません、お名前は失念しました(2015/01/21訂正) {佐久間駿という方です})がタムラ製トランスを使って設計した3台の300Bアンプを試聴するという趣旨でした。半日かけてじっくり3台の300Bアンプを試聴しました。私の持ち込んだCDやSACDも何枚かかけていただきました。
どのアンプもさえない音に聞こえました。周波数レンジがやけに狭く感じられました。シンバルのアタック音がはっきり聞こえません。確かに耳障りな音は一切出さないのですが、伝わってくる音の情報量が少ないのです。これでは、音楽、特にジャズには没入できません。やはり300Bアンプは魅力が乏しいと感じました。

秋葉原の旧ラジオ会館4階にサトームセンがあった頃は、秋葉原に行くたびに必ず立ち寄っていました。ある日店頭で、一人の紳士が、管球アンプを購入したいので試聴させてくれ、と店員に言っているのが聞こえました。金に糸目はつけないので、一番音のよい管球アンプを購入したいというのです。これは、面白そうだと思い、私もそばで聴かせてもらうことにしました。
まず最も価格の高いアンプから試聴を開始しました。紳士はすぐに首を横に振りました。次に2番目に高価なアンプを試聴しました。やはり紳士は不満そうです。その後店頭にあるほとんどの管球アンプを試聴し、最後に最も安い(確か7万円ぐらいだったと思います)6GW8 PPが残りました。紳士はその音に満足し、それを購入しました。私の耳にもそのアンプが音質では最も優れているように聞こえました。紳士は良い買い物をしたと思います。

サトームセンとともによく立ち寄ったのが三栄無線という、オーディオ自作派むけのショップです。やはり旧ラジオ会館4階にありました。管球アンプのキットで有名な店でした。何度も試聴させてもらいましたが、私が一番よいと感じたのは、最も安価な6BQ5のアンプでした。

以上の経験から、管球アンプは安い物の方が良いと考えるようになりました。若い人にも、安くて音の良い管球アンプを勧めたいと思います。

コスト・パフォーマンス以外にも管球アンプには様々なメリットがあります。

自作が容易
シンプルな回路で充分高い音質が得られる。また、回路定数が適正値から多少外れていてもほとんど音質に影響しない。よって、初心者でも良いアンプが作れる。
電源電圧変動に強い
特にプッシュプル回路の場合、AC電源の変動の影響をほとんど受けない。
高周波ノイズに強い
真空管の高周波領域での増幅度は低く、高周波が混入しても影響が少ない。
立ち上がりが早い
電源オンから1分ぐらいで平衡状態になる。半導体アンプの場合は、ヒートシンクが温まるまで15分〜30分ぐらいかかり、その間は音質が低い。
ミュージック・パワーが大きい
瞬間的には定格出力の3〜4倍のパワーを出せる。スピーカーの能率や部屋の広さにもよるが、定格出力は10〜15Wあれば充分。

特に自作の容易さは、コスト・パフォーマンスに次いで重要なメリットです。回路設計をする際、CRの値を適正値の半分にしても倍にしても、管球アンプはちゃんと動いてくれます。そのゆるさが私は好きです。
正確に回路定数を計算しようとしたとき、真空管のデータシートの規格値を元に計算しますが、この規格値自体が単なるティピカル値なので、実際には真空管一本一本にかなりのばらつきがあります。例えばμの規格値が20であっても、実際には17だったり24だったりするわけです。双三極管の各ユニット間でそれだけのばらつきがあることもざらです。ですから、あまり神経質にならず、おおざっぱな計算で設計してもかまわないのです。

以上、管球パワーアンプのメリットについて私見を述べました。

管球パワーアンプは話題にのぼることも多く、MJ誌などでも取り上げられることが多いのですが、それに比べれば管球プリは話題にされることが少ないと思います。管球プリは難易度が高く、アマチュアの手に負えないという面があるからだと思います。
しかし、それだけに作りがいがあります。私は4年間苦労を重ねて管球プリPA-210を完成させましたが、初めて満足のいくプリアンプを作り上げることができたと実感でき、自分の技術にも自信が持てるようになりました。今では、PA-210はGaudiの「顔」となっています(トップページ左上の画像はPA-210の後ろ姿です)。管球プリの魅力はもっと取り上げられてもよいと思います。

このページの先頭に戻る

マルチアンプ方式の優位性

一言でマルチアンプ・システムの魅力を言い表すと、音質劣化要因の少ないピュアなシステムだということです。
アンプの出力からスピーカーのボイスコイルまで、部品が最少で、アンプのパワーがほぼ100%スピーカーのボイスコイルに伝わります。すなわち、損失が最少であることです。
結果としてどのような音質であるかと言えば、和太鼓の肌で感じる風圧のような音(迫力のある音)から、木々の木の葉が擦れ合ってたてるざわざわとした音(繊細な音)まで、何でも再現できる忠実度の高さが特徴です。

オーディオファイルの間でよく言われるのが、個人の音の好みでオーディオ機器を選ぶという話です。シャカシャカした高音が好きだからハードドーム・ツィーターを使ったスピーカーを選ぶだとか、柔らかい音が好きだから管球アンプを選ぶだとか、その手の話です。しかし、マルチアンプ・システムの絶対的ピュアなサウンドはこのような個人の好みを超越していると思います。
例えば、ミス・インターナショナルが実際に目の前に現れれば、たいがいの男はその美しさに圧倒されてどぎまぎすると思います。いえ男ばかりでなく、女性でも同じ思いをするでしょう。本当の美人というのは誰が見ても美人なのです。同様に、本当に優れたオーディオ・システムは誰が聴いても良い音に聞こえるものです。マルチアンプ・システムこそがそのような優れたシステムであるというのが私の主張です。

具体的にマルチアンプ方式のメリットを挙げます。

様々な特性のフィルターを使える
マルチアンプ・システムではプリアンプとパワーアンプの中間に接続されるチャンネル・デバイダー(チャンデバ)にフィルターを設けます。チャンデバではアクティブ・フィルターを使用できますので、-18dB/octや-24dB/octといった急峻な特性のフィルターを簡単に実現できます。もちろん-6dB/octのパッシブ・フィルターにすることもできます。デジタル・フィルターを使用すればさらに急峻な-96dB/octでかつ位相変位なしといったフィルターを実現できます。fcも含めて、フィルターの特性をスイッチで切り替えることもできます。フィルター特性を容易に変えられることで、スピーカーの実力を100%引き出すことができます。
スピーカー・ユニットの組み合わせに制限がない
LCネットワーク方式では、ツィーターの能率はウーファーより高くないといけません。マルチアンプではそういう制限はなく、高能率ウーファーと低能率ツィーターの組み合わせも可能です。一般的にユニットの口径が大きいほど能率は高くなるので、大口径ウーファーを使用するシステムでは、マルチアンプの方がツィーターやミッドレンジの選択の範囲が断然広くなります。現にGaudiでは1982年〜2012年までの長きにわたってミッドレンジに小口径フルレンジ・ユニットを使用してきました。ウーファーより能率は低いものの問題なく使えました。
パワーアンプとスピーカー・ユニットをダイレクトに接続できる
スピーカー側にアッテネーターやLCネットワークが必要ないので、アンプの出力を直接ユニットに接続できます。アンプで増幅された信号はまったく減衰することなく、ユニットのボイス・コイルを流れます。私は、このことこそが風圧のような肌で感じる音を再現するための秘訣ではないかと考えています。
パワーアンプの混変調歪が減る
パワーアンプには狭い帯域の信号しか入力されないので、混変調歪が減ります。
パワーアンプの最大出力にゆとりができる
低音と高音が重畳した信号では、ピーク値が非常に高くなる瞬間があります。例えば、低音のピークをvpl、高音のピークをvphとした場合、両者が重なり合った瞬間には、トータルのピーク・レベルvptは、vpt=vpl+vphとなります。アンプの最大出力がvptより低い場合、信号は歪んでしまいます。低音と高音を分けると、それぞれのピーク値は重畳した信号のそれより低くなります。つまり、それぞれ本来のvpl、vphとなるわけです。マルチアンプ方式は、モノアンプ方式に比べ、より小出力のアンプですむことになります。

Gaudiは私のつたない設計による機器で構成されていて、欠点・弱点も色々ありますが、それでもかなりよい音に聞こえるのは、マルチアンプ・システムだからこそと思います。

このページの先頭に戻る

自作システムの意義

システムを自作することの最大の利点は、システム構成を自由に決められるということです。モノアンプ・システム、マルチアンプ・システムのどちらでも実現できます。
マルチアンプ・システムは事実上自作システムでないと実現は困難です。メーカー製のスピーカーやアンプはマルチアンプ向きにできておらず、無理にシステムを組んでも、とても高価になったり、設置スペースが足りなくなったり、スピーカーを改造しなければならなかったりします。自作なら、マルチアンプ・システムを限られた予算や設置スペースに収まるように設計することが可能です。
以下、マルチアンプを前提にし、自作システム構築の勘所を述べます。

自作システムでは各機器の仕様を自由に決められます。電気的仕様はもちろんですが、サイズ、形状など機構的仕様も自由に決められます。常識にとらわれることはありません。入出力端子をアンプ側面につけたり、筺体を手持ちのラックにちょうど収まるサイズにしたり、大口径ウーファーをぎりぎりスリムなエンクロージャーに収めたり、自分の都合に合わせて決めればよいのです。このことは、マルチアンプ・システムという規模の大きなシステムを組む上でとても重要です。

システム中、最も自作すべきはスピーカーです。というのも、メーカー製スピーカーでマルチアンプ専用の(ネットワークやアッテネーターを内蔵していない)機種はほとんどないからです。バイアンプ対応スピーカーはそこそこありますが、やはり余計の部品は取り外し、ユニットから直にケーブルを引き出したいところです。そのためには、スピーカーを分解・改造しなければなりません。改造すれば、メーカー保証がなくなったり、中古として売るときに値段がつかなくなったりします。高価なスピーカーほど改造する気持ちにはなれないものです。
自作ならマルチアンプ前提のスピーカーをつくるのは簡単です。単にネットワークとアッテネーターを省略すればよいだけです。ユニットの選定時に能率を考慮する必要はなく、高能率の大口径ウーファーに低能率のドーム・ツィーターを組み合わせることも可能です。SS-307SS-309のように、マルチエンクロージャー仕様にすれば、ユニット単位でのアップグレードが可能です。例えば、ミッドレンジだけをアップグレードすることもできるのです。

自作スピーカーでは一流ブランドのスピーカーに歯が立たないのでは?という疑問を抱くアマチュアは多いと思います。しかし、あながちそうとは限りません。スピーカーの音質のほとんどは使用ユニットによって決まります。単体で発売されているユニットのほとんどは高品質・高性能なので、自作スピーカーでもかなりの高音質が期待できます。もちろんエンクロージャーに大きな欠陥があれば音質は大幅に落ちますが、基本を守って造れば、そこそこ良い箱ができるものです。一流メーカーの広告やMJ誌などの専門誌の製作記事をみると、自分にはとてもこんな難しいものは造れないと感じてしまいがちですが、案外もっとシンプルなエンクロージャーでも充分高音質だったりします。「案ずるよりも生むがやすし」、「なせば成る(鳴る)」のが自作スピーカーです。
大学生の頃、友達の下宿に遊びに行って、彼の自作スピーカーの音を聴かせてもらってびっくりしたことがあります。彼は専門知識がほとんどないにもかかわらず、安くて良いスピーカーがほしいということで(彼は貧乏学生でした)、秋葉原のジャンク屋で買った20cmフルレンジ・ユニットを使ってスピーカーを自作していました。何と、エンクロージャーの材料は段ボールでした。しかし、周波数バランスも良く、とてもよい音に聞こえました。専門家であれば、段ボールのエンクロージャーなどはなから否定するでしょうが、実際には結構いけるのです。まさに「なせば成る(鳴る)」の典型です。

パワーアンプもマルチアンプ前提に仕様を決めれば、コストやサイズを抑えられます。
パワーアンプは最大出力をどれぐらいにするかによって、設計が大きく変わります。一般に最大出力を大きくするほど回路は複雑になり、部品点数が増えます。それに伴ってコストが上がり、実装設計が難しくなります。
マルチアンプ方式では、「マルチアンプ方式の優位性」で述べたように、最大出力はモノアンプ方式に比べ低めで大丈夫です。モノアンプ方式では使いにくいホーン型ユニットを使用することを前提にすれば、さらに最大出力を低めにできます。また、マルチアンプとは関係のない話ですが、自作アンプは市販アンプほど入力感度を高くしなくてよいと思います。つまり、低ゲイン、低出力のアンプでよいということです。
低ゲイン、低出力のアンプは回路をかなり簡素化できます。部品点数は少なく、シグナルパスは短くなります。コストを安く抑えるだけでなく、同時に高音質化を期待できます。自作アンプといえど、メーカー製ハイエンド機に匹敵するアンプも夢ではありません。

プリアンプやチャンネル・デバイダー(チャンデバ)に関してはどうでしょうか。自作する意義はあるでしょうか。私は答えはイエスだと思います。パワーアンプを自作するために技術を習得し、オシロスコープなどの測定器を買いそろえたすると、それをプリアンプやチャンデバに応用するのは自然な流れだと思います。
プリアンプの設計にはパワーアンプ以上に高い技術が要求されます。扱う信号レベルが低いほど雑音が混入しやすいし、歪みやすいからです。プリアンプの設計・製作に取り組むことは技術の向上につながり、パワーアンプ製作の上でも役立つと思います。
自作プリアンプを成功させるカギは、やはり単純化だと思います。自分が使わない機能、なくても良さそうな機能は極力省くことです。ただし、あまりやり過ぎると、後で後悔することがあります。私も、PA-210にトーン・コントロールをつけなかったことを今では少し後悔しています。
チャンデバは市販されている機種が非常に少ないことと、その仕様をシステム内の他のコンポーネント(スピーカー、パワーアンプ、プリアンプ等)の仕様に合わせる必要があるため、システム中最も自作向きのコンポーネントと言えます。

システム全体を成功させるのに一番大切なことは、自分の耳で音の良し悪しを判定できるような磨かれた感性だと思います。アマチュアの場合、特に私のような庶民の場合、精密で高価な測定器を所有することは難しいので、耳で音質を評価し、問題点を見つけだす必要があります。
しかし、意外に自分で評価できない人は多いものです。私のオーディオ仲間の中にも何人かそういう人がいます。そういう人は人の意見に大きく左右され、オーディオ雑誌に書いてあることをそのまま受け売りしたりします。それでは自作システムの評価はできません。評価ができないと、お金や労力をかけた割にはシステムの完成度が上がりません。システム全体からパーツの一つ一つまで自分で評価できるようにならねばなりません。
ではどうしたらそういう能力が身につくのでしょうか。それは経験を積み重ねることです。自信がなくてもとにかく自分でやってみるということです。設計・製作・評価・改良のサイクルを繰り返しているうちに、徐々に、どこをどう変えたら音がどう変わるかが見えてきます。音を聞いただけで問題個所を特定できるようになれば、上級者です。

自作システムでは、自分のアイデア、ひいては思想まで、ストレートに反映させることができます。まるで自分を映す鏡のようです。自分の成長に伴って、システムも成長していきます。オーディオ・システム作りは本当に奥の深い、知的で創造的な趣味だと思います。




このページの先頭に戻る